BI」と「AI」はよく似ている言葉だけれど、2つの言葉に違いはあるのか気になる人も多いでしょう。結論から言うと、BIとAIはまったく異なる単語です。しかし、2つを組み合わせることによって、ビジネスシーンにおいて高い効果を期待できます。

本記事では、BIとAIの違い、BIとAIを組みわせることによって何が実現できるのかについて解説します。

BIとAIはまったく別のもの

BIとはデータサイエンスに関するワードであり、経営管理やマーケティングなどに利用されます。一方、AIとはコンピュータサイエンスに関するワードであり、人工知能やディープラーニングなどに利用されます。

2つはフィールドがまったく異なるワードであるため、比較対象として考えることは一般的にありません。まずはそれぞれの特徴について理解することで、BIとAIを組み合わせて期待できる効果についても把握しましょう。

BIとはビジネスのサポート

BIとは、ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)を略した言葉であり、企業が蓄積したデータを分析することで経営の意思決定をサポートする仕組みです。

クロス分析やLTV分析、RFM分析などから顧客理解を深めることによって、顧客の声を理解してターゲットの行動を理解することが目的です。ビジネスシーンにおいて利用されるのが一般的であり、経営の意思決定やマーケティングのサポートに活用できます。

AIとは人工知能

AIとは、アーティフィシャルインテリジェンス(Artificial Intelligence)を略した言葉であり、人の脳と同じように認識、学習、判断、予測などの処理をコンピュータ上で実現するシステムです。

ディープラーニングの機能が向上したことにより、コンピュータチェスやロボットの自動運転、翻訳機能の自然言語処理など、大量のデータをシステムの判断で違和感なく処理できることを実現しました。

BIとAIは比較する領域がそもそも違う

システムを介してデータを分析する点ではBIとAIに共通点はありますが、利用シーンや開発背景などのグラウンドはまったく異なります。BIがビジネスシーンの活用に限定されるのに対して、AIはビジネス、科学、芸術などのあらゆる分野で研究の進んでいる分野です。

しかし、AIもBIもデータ分析においては共通する点があります。2つを組み合わせて大量のデータを効率的に処理することで、顧客獲得や効率的なエンゲージメントに活用することが可能です。

BIとAIを組み合わせることはできる

従来は属人的に解き明かしていた、顧客の思考や行動といったマーケティングに関わるサイエンスも、AIの導入によって驚くべき進化を遂げています。たとえば、顧客の抱える悩みや商品に求める性能などの膨大なデータをAIが分析して、企業の意思決定やマーケティングに活用することも可能になりました。

アンケート結果を集積するといったテンプレートに従った情報ではなく、顧客のWeb行動履歴や購買履歴などからデータを集めるため、顧客理解の深掘りにもつながるのです。

BIとAIを組み合わせることで実現できること

従来は属人的になっていた経営の意思決定を、AI搭載型のBIではサポートします。ここでは、BIにAIを組み合わせることで実現できることを解説します。

自動化できる範囲が広がる

BIツールにAIを組み合わせることで、データの収集から施策の決定まで自動化ツールに任せることができます。属人的になっていた経営の意思決定、つまり、BAの領域まで自動化することが可能です。

BIとBAも、間違えやすいワードです。2つの違いについては、以下の記事を参考にしてください。

記事:https://www.itreview.jp/labo/archives/13781

シミュレーションが可能になる

BIツールではデータの収集と分析、整理が基本になりますが、AIツールを組み合わせることによって、施策の仮説をシミュレーションすることも可能になります。What-if分析などを用いることによって、予算を立案する前に、蓄積したデータから条件の変化を加味した売上げの変化を事前に把握できるためです。

マーケティングデータの統合ビューによって、費用と顧客価値の最適化にもつながることでしょう。

経営方針の意思決定までサポートする

通常のBIツールでは、経営における意思決定まではサポートできません。データの分析と整理までが対象であるからです。しかし、AIツールを組み合わせることによって、具体的な施策の提案や施作のシミュレーションまで実現し、意思決定までサポートできるようになります。

コスト予測とペース配分を実施し、売上げの最適化にも用いることができるでしょう。

担当者が変わっても一律の判断ができる

マーケティング担当者の手腕によって、自社の業績に左右するほどの影響が出ることがあります。しかし、AI搭載型のBIツールであれば、企業に蓄積したデータをもとに判断を下すため、担当者の経験やスキルに左右されることはありません。

マーケティング担当者が退職した場合でも、安定した利益を確保するには、属人的な経営では難しいでしょう。利用する期間が長くなれば長くなるほど、BIツールにはデータの蓄積が進み、精度の高まりを感じることもできるはずです。

事業の生産性の向上を期待できる

BIツールにAIを搭載することで、自動化できる範囲は広がり、シミュレーションを算出し、意思決定までサポートすることができます。データの収集、可視化といった本来のBIツールの役割だけでなく、事業全体の生産性の向上も期待することが可能なのです。

とくに顧客との接点を増やしたい企業にとっては、データ重視のデジタルマーケティングの展開につながり、長期的な信頼関係の構築を期待できるでしょう。

AIを組み合わせてBIを活用しよう

BIとAIはデータ分析できる点では共通していますが、利用領域や開発背景においてまったく異なる単語です。しかし、BIとAIを組み合わせることは可能であり、現代ではAIを搭載したBIツールも数多く誕生しています。

社内のデータを蓄積してレポートに出力し、可視化する程度の機能であれば、今までのBIツールでも可能です。しかし、社内の意思決定をサポートしてシミュレーションまで実現するためには、AI搭載型のBIツールを活用するのがよいでしょう。BIツールにAIを組み合わせると、データ収集から経営施策の決定までをツールできます。とくに、マーケティング分野においては高い効果を期待できるでしょう。

この記事の執筆

成瀬ことおみ

ライター

大手金融機関にて勘定系システム運用を8年担当。男手ひとつで2人の息子を育てるためWebライターを志す。「正しい情報を、正しく伝える」を信念にIT業界の記事を数多く執筆している。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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