近年、さまざまな業界でデジタル化が進み、各社ともIT資産は増え続けています。その一部は会計上の固定資産にあたるため、購入年月や価格などを正確に把握する必要があります。
セキュリティやコンプライアンスの面でもIT資産管理が重要視されており、多くの企業でIT資産管理ツールの利用が増えています。そこで今回は、IT資産管理の必要性とツール導入によるメリットについて解説します。
IT資産管理が必要な理由
IT資産管理の必要性について、具体的に見ていきましょう。
適切なコストで運用するため
サーバーやネットワーク機器とは異なり、PCやモバイル端末、電話、ライセンスなどは従業員への割り当てが必要です。従業員が増えた際も速やかに在庫確認を行い、追加購入すべき数を判断しなければいけません。
しかし、十分な管理が行われていない場合、過剰在庫にも関わらず追加購入される恐れがあります。特にライセンスに関しては目視ができず、利用しないライセンス料を払い続けることにもなりかねません。
適切なコストで運用するには、IT資産管理が必要です。常に最新在庫を把握することで購入ミスが起きにくくなります。ライセンスの使用状況も可視化できるため、未使用ライセンスの停止・解約も可能です。
コンプライアンスを遵守するため
IT資産管理に関わるコンプライアンス違反として、ソフトウェアのライセンス違反があります。ソフトウェアは著作権法によって保護されており、ライセンスの範囲を越えたインストールは違反行為になります。
違反が発覚すれば損害賠償や刑事罰などの法的な処罰を受けるだけでなく、企業ブランドの低下や社会的信用の失墜を招く可能性もあります。IT資産管理を行うことでライセンスが把握できるようになり、コンプライアンスを遵守することが可能です。
セキュリティにおけるリスクを回避するため
IT資産管理が行われていない環境では、さまざまなセキュリティリスクを伴います。モバイル機器やUSBメモリなどを自由に持ち出せる環境の場合、機密情報が流出する可能性が高くなります。紛失や置き忘れが発生した際も、本人が報告しなければ誰にも気づかれず、後になって大きな問題となる可能性があります。
また、OSやソフトウェアが最新にされていない端末は、セキュリティインシデントの入り口となる可能性があります。ウイルス感染の発端となった端末が特定できず、復旧までに多大な時間を要することも考えられます。これらのリスクを回避するためにも、IT資産管理は重要です。
IT資産管理の対象範囲
IT資産の対象範囲には以下のようなものがあります。
・ハードウェア
サーバーやクライアントPC、プリンター、モバイル端末、ネットワーク機器、USBやHDDなどが該当します。利用者を明確にし、購入年月やスペックも記録しておきましょう。
・ソフトウェア
WindowsなどのOS、アプリケーションソフトウェアなど、各端末のインストール状況とバージョン管理を行います。不要なフリーソフトがインストールされていないことも確認する必要があります。
・ライセンス
端末ごとにライセンスの割り当てを行います。購入年月や有効期限を把握し、コンプライアンスを遵守した運用が必要です。
・その他
コンピュータ名、IPアドレス、MACアドレス、PCの操作ログまで管理できれば、より高いセキュリティ環境を整えられます。
IT資産管理ツールを利用するメリット
IT資産管理ツールにはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
コストの最適化
手作業によるIT資産管理は、管理者にとって大きな負担です。情報の収集や入力に時間がかかるだけでなく、ミスや紛失、更新し忘れなどが発生しやすくなります。情報の正確性を保つための棚卸も必要で、二度手間が発生することになります。
IT資産管理ツールを使えば、これらの管理に関わる手間やコストを大きく軽減できます。ネットワーク上の端末やマシン名、設定状況などの自動収集が行え、ソフトウェアのバージョンおよびインストール状況も取得可能です。そのほか、操作のログやIPアドレスなど、管理者が必要とする情報は全て網羅できるため、管理ミスが起きにくくなります。
また、予算を計画する上でもIT資産管理ツールは有効です。会計処理で使われる固定資産の情報が一目で分かり、リプレースの予定が立てやすくなります。翌年度の新入社員にかかるおおよその経費も把握できるため、効率的な予算管理が可能です。
セキュリティの強化
セキュリティ対策には、アンチウイルスソフトのインストール、監視、ログ取得などさまざまな方法があります。IT資産管理ツールを使えばほぼ全てに対応可能です。
ソフトウェア管理機能では、管理者側からOSおよびアプリケーションをコントロールできるようになります。全ての端末でバージョンと更新が統一できるため、更新漏れによる脆弱性を防ぐことができます。また、セキュリティパッチが公開された際も、計画的な一斉適用が可能です。万が一セキュリティインシデントが発生したとしても、一度に対処できるのは大きなメリットだと言えます。
また、監視機能ではPCへのログイン状況やインターネットへのアクセス、データのダウンロード、USBメモリの使用など全ての操作が可視化されます。従業員が使用したアプリケーションやファイルだけでなく、入力内容も詳細に読み取ることが可能です。操作内容が全てログとして残るため、情報漏洩や不正行為の抑止につながります。
コンプライアンス、内部統制の強化
企業が最も重視すべきなのが、コンプライアンスの遵守です。特にソフトウェアのライセンスについては利用人数や使用期限が決められており、適切な管理が必要です。IT資産管理ツールを使えば、ライセンスの自動収集を行えるようになります。未使用のもの、1人に複数割り当てているもの、使用期限などを一目で把握できるため、ライセンス違反を未然に防ぐことができます。
また、高いセキュリティ環境を構築するには内部統制の強化も必須です。フリーソフトを禁じることやUSBメモリの使用記録を残すなど、リスクを防ぐためのルールを周知徹底しなければいけません。IT資産管理ツールを使えば、アクセス制御やログ監視によってそれらが可能となります。
おすすめのIT資産管理ツール4選
ここでは、おすすめのIT資産管理ツールを4つ紹介します。
1. SKYSEA Client View

Sky株式会社が提供する「SKYSEA Client View」は、クライアントPCやサーバーのハードウェア情報、ソフトウェア情報、ネットワーク機器情報などを24時間ごとに自動収集します。ネットワーク接続できないPCでも外部記録媒体によって収集できるため、漏れなく全ての資産管理が行えます。更新プログラムの配布では、スケジュール設定による一括処理が可能です。
・SKYSEA Client Viewの参考価格
SKYSEA Client View Light Edition(100台の場合):1,138,000 円 / 100台構成(管理機端末機含む)
・SKYSEA Client Viewの参考レビュー
在宅での業務が増え、どこまでが労働時間になるのか曖昧になっていましたが、勤怠状況をきっちり申請できるようになります。
SKYSEA Client Viewへのレビュー「社内情報の漏洩を防いでくれます」より
業務中に慌てていたりするとたまたま危険なサイトや迷惑メールにアクセスしそうになってしまいそうになることもありますが、セキュリティがしっかりと保護されているので、漏洩を未然に防いでくれます。
ウイルスの注意喚起も発信できるので、意識も高くなりました。
2.LANSCOPE エンドポイントマネージャー (オンプレミス版、クラウド版)
エムオーテックス株式会社が提供する「LANSCOPE エンドポイントマネージャー」は、デバイス情報の編集/台帳化、インストールアプリ管理、アプリ・ファイル配信、ネットワーク検知、リモートコントロールなどさまざまな機能を搭載しています。オンプレミス版とクラウド版の2種類があり、クラウド版ではモバイル端末の利用状況やログの取得が可能です。リモート操作機能によって、サーバーやクライアントPCの夜間メンテナンスにも対応できます。
・LANSCOPE エンドポイントマネージャー (オンプレミス版、クラウド版)の参考価格
オンプレミス版:お問い合わせ
クラウド版:ベーシック500円/台(初期費用として別途30,000円)
・LANSCOPE エンドポイントマネージャー の参考レビュー
特に重宝しているポイントは以下となります。
LANSCOPE エンドポイントマネージャー(オンプレミス版) へのレビュー「ログ管理と勤怠調査に利用中」より
・データの持ち出し対策として、許可されたメディア以外はデータコピーができないようにしています。
・勤怠管理における、申請と実務との差異を簡単に把握することができています。これは在宅勤務にも利用できています。
・キーワード登録により、不正行為または注意喚起行為をした場合に警告通知が管理者にすぐさま届く点です。
3.System Support best1(SS1)

株式会社ディー・オー・エスが提供する「System Support best1(SS1)」は、機器管理およびソフトウェア管理、更新プログラム管理、勤務時間管理などを基本機能として搭載しています。オプションを追加することで、セキュリティ管理やログ管理なども利用可能です。保守サービスが手厚く、電話やFAX、メール、遠隔操作、訪問まで対応しています。
・System Support best1(SS1)の参考価格
1ライセンス5000円から
・System Support best1(SS1)の参考レビュー
インストールしているソフトのバージョンまで管理できるので、ソフトの脆弱性対策に有効。また、管理者からソフトをばらまくこともできるので、オンサイト対応が格段に減った(オンサイト対応にかかる時間が、前年比で85パーセント減を実現した)。5000台以上あるPCや300台以上ある印刷機器を一元管理できる点にメリットを感じた。
System Support best1(SS1)へのレビュー「IT機器の一元管理が容易に」より
4.秘文
株式会社 日立製作所が提供する「秘文」は、社内だけでなく、テレワークなど社外にあるPCなども含めて管理が行えます。ハードウェア・ソフトウェア管理、ライセンス管理、
グループ企業管理、リモートコントロールなどの基本機能に加え、PC端末におけるセキュリティ設定の自動点検が可能です。スマートデバイスの一元管理も行え、位置情報の取得やリモートロックにも対応しています。
・秘文の参考価格
秘文 統合エンドポイント管理サービス(標準価格):1,520,000 円 / 年 / 100台(税抜)
・秘文の参考レビュー
USBメモリへデータをコピーした内容を上司が確認して流出しないよう制御しております。
また、外部記憶デバイスの紛失に対応するため暗号化を強制するようにしています。
内容は上司が確認できるようにしています。これによりシステム管理者の運用の手間がかなり削減できました。
秘文へのレビュー「情報流出防止に一役買っています。」より
IT資産管理ツールで効率的な運用を!
コンプライアンスの遵守やセキュリティ強化を進める上で、IT資産管理は重要な業務の1つです。対象範囲は多岐に渡るため、手作業による管理は大きな負担となります。しかし、IT資産管理ツールを使えば、正確かつ効率的な運用が可能です。ツールに備えられている監視機能やログ収集機能を活用することで、より強固なセキュリティ環境を実現できます。気になる方はぜひ、IT資産管理ツールの導入を検討してください。