インターネットは世界中に広がり、その中でマーケティングも大きく変化しています。従来は営業が直接企業や家庭を訪問して集めた情報を不特定多数の人々に実施するマーケティングが主流でした。しかし、現代はIT中心の世の中となり、従来のやり方とはまったく異なるデジタルを使ったマーケティングが主流となっています。その結果、デジタル情報を発信するWebサイトの充実と活用が必要不可欠となっています。
かつてWebサイトを作成・管理・運用するためには専門知識が必要で、コストも時間もかかりうまくいかないケースがよく見られました。しかし、効率よく運用できるCMSツールの導入により、Webサイトをとりまく環境に大きな変化が起きました。予算の少ない中小企業や個人でも気軽に情報を発信できるようになったのです。
CMSとは?
「CMSとはいったい何なのか?」「CMSを活用するとどんなことができるのか?」
そのような疑問をもたれている方は多いと思います。ここではそんなCMSに関する疑問を解決します。
CMSは「Contents Management System」の略称で、Webサイトの作成、管理および運用を行うために開発された管理システムのことをいいます。書類作成を行うWordやプレゼンテーションツールのPowerPointのように、CMSを導入することで、専門的な知識がなくても簡単にWebサイトの運用ができます。

CMS導入のWebサイトとそれ以外との違い
従来のWebサイト作成では、プログラム言語(HTMLやCSS、JavaScriptなど)を理解して、その言語でサイトの構築を行う必要がありました。それぞれのプログラム言語の規則に合わせて入力する必要があり、1つのWebページごとに1から作り直す必要があるため時間や手間がかかっていました。またWebサイトを更新する際にも、プログラム内で編集を行うため確認作業が大変でした。このような理由から、Webサイトの作成・管理を“外注”している企業が多数存在していたのです。
CMSを使ったWebサイト作成では、必要な画像やテンプレート・画像・テキストを、個別にデータベースで保管できます。そのデータとCMS内のデータを組み合わせることにより、Webページが自動作成されます。データベース上に保管しているデータを編集するだけで更新できるため、プログラム言語の知識も不要です。
CMSの基本機能
CMSにはさまざまな機能がありますが、主な機能として「作成・編集・管理機能」「Webマーケティング機能」「ユーザー管理機能」の3つに分類することができます。
作成・編集・管理機能
CMSの最大の機能は、コンテンツの作成・編集・管理機能です。プログラム言語の知識が必要ないため、簡単にWebサイトを作成・編集できます。また、多くのCMSは「更新履歴を保存・復元することが可能」「視覚的に更新できる」「承認フローの管理が可能」といった機能も備えています。通常のプログラミングでは更新履歴を残せませんが、CMSでは過去の内容を消さずにデータを保存できます。更新や更新前の内容に戻すことも簡単で、記事の公開日時の指定も可能です。
通常のプログラミングではデータ入力後に、Webサイトが想定通りに完成しているか確認する必要があります。そのため、「入力→サイト確認」の繰り返しで、時間と手間がかかっていました。しかし、CMSでは視覚的に確認しながらWebサイトの作成・編集・更新が簡単に行えます。また承認フローに関する履歴も残すことが可能なので、承認フロー機能が付与されているCMSで管理をすれば見落としも防げます。
Webマーケティング機能
CMSにはWebマーケティング分析に必要な機能も多く搭載されています。Webサイトのアクセス分析ができ、Google Analyticsとの自動連動も可能です。また、CMS上で立ち上げたLPサイトの改善方法を分析して、コンバージョン率を高めるLPO(ランディングページの最適化)機能も備えています。また、「アンケート・メルマガ配信機能」を使えば、メルマガ配信やアンケートの回答結果も簡単にダウンロードでき、Webマーケティングに有用なデータ収集も可能です。さらに、「問い合わせ・FAQ作成機能」を使えば、製品に関する問い合わせや過去の問い合わせをFAQとして記載することもできます。
ユーザー管理機能
CMSはサイトを作成・管理するだけでなく、作成に関わるメンバーの権限をユーザーごとに設定することができます。CMSにログインして操作した履歴の確認ができるため、責任の所在を明確にできます。また、作成・変更・削除の操作に関する権限をユーザーごとに設定可能なので、重要データに関しては特定のユーザーのみに操作権限を与えることで間違った変更・削除を防げます。ユーザーをグループ分けして管理することも可能で、グループごとに権限条件を変えたり承認フローの設定ができたりします。
CMSの主な分類
CMSには、Web制作会社などが独自に開発を行う「独自開発型」と、比較的自由度が高くソースコードが無料で提供されている「オープンソース型」の2種類あります。
独自開発型
システム開発を行うベンダーが制作し、販売するCMSです。導入には初期費用がかかりますが、ベンダーのサポートが受けられるので、不具合や脆弱性に対し保証してもらえます。企業の商業利用が前提となっているため、大量のページ数にも十分対応できます。
オープンソース型
プログラムが一般公開されているCMSのことで、ライセンス料が必要なく安価に導入できます。汎用性が高く、デザインやテンプレートのカスタマイズも簡単です。しかし、多くのオープンソース型CMSは商業利用の前提で設計されていないため、ページ量が多い場合には不向きでしょう。またサポート体制も万全ではないため、不具合が起きた場合はすべて自己責任となります。
また自社システムとの緊密な連携や独自機能で複雑なカスタマイズを行いたい場合に導入するためのCMSツールもあります。ただし一からの設計・開発となるため、導入費用が高く導入までの時間も長くなる傾向にあります。
CMS導入のメリットとデメリット
CMSを導入することにはさまざまなメリットがありますが、もはやデジタルマーケティングに必要不可欠なマストアイテムになっているといえるでしょう。

CMS導入のメリット
1.一元管理
CMSには複数のテンプレートが用意されており、操作方法やデザインが共通化されています。そのため担当者が変わったとしても、デザイン性のばらつきや配置ミスが起こらないため、一貫性のないWebサイトになるのを防げます。
2.検索エンジンの最適化
タイトルやディスクリプションにSEO効果の期待できる設定を施すことで、検索エンジンで高評価されやすいサイトを作成できます。また、制作したコンテンツは随時増やすことも簡単です。
3.Webマーケティングに効果的
Webサイトはすべてリアルタイムで情報更新できるので、アクセス数やコンバージョン計測などのWebマーケティングに生かせます。また、反響次第でコンテンツ追加も可能なことから、PDCAサイクルを回しながらの運営にも非常に適しています。
4.複数人での同時作業が可能
CMSの保管データを編集するだけなので、データ編集を複数人で同時に行うこともできます。
5.レスポンシブ対応の自動化
レスポンシブ対応とは、画面サイズに応じて最適に表示されるようデザインを変えることをいいます。CMSを用いるとその設定も簡単にでき、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも見やすいWebサイトを作成できます。
6.SNSとのスムーズな連携
FacebookやTwitter、Instagram、そのほかのSNSと自由に連動させられます。そこからサイトへの流入・集客が見込めるでしょう。
7.コストの削減
従来のプログラミング言語による作成では専門的な知識が必要で、外注している企業も多くありました。CMSを使うことで、外注せず自社で作成・更新ができるため、コストと時間の削減に大きく寄与します。
CMS導入のデメリット
1.コンテンツ移行作業の手間
コンテンツを別の場所に移行するためには、テンプレートごとの変更が必要となるため、ある程度時間がかかります。
2.最低限のCMS操作知識が必要
従来のような専門知識は必要ありませんが、最低限のCMS操作を覚える必要はあります。
CMSの活用事例
CMSを導入したことで得られるメリットについて、ITreviewに集まったレビューをもとに活用事例を紹介します。
負荷分散がうまくできるようになった
「これまで、サイト作成や編集作業においては、特定の修正要件があった際、HTMLタグやCSSを、一人の担当者のみで編集して、対応していました。WordPressは、複数人のアカウントをWordPress上に直接作成でき、共同編集もできるため、特定の修正案件を担当者一人に依存することなく、分業(共同作業)することができます。それまでは一人の担当者のみに負荷が集中していましたが、負荷分散がうまくできるようになり、サイト作成や編集作業の運用が効率的にできるようになりました」
https://www.itreview.jp/products/wordpress/reviews/81304
▼利用サービス:WordPress
▼企業名:世界真光文明教団 ▼従業員規模:300-1000人未満 ▼業種:IT管理者
WEB営業という面にまで貢献
「会社のコーポレートサイトとECサイトのブログで運用しているのですが、SEO的にも強く、上位のランディングページをつくりこめているので、WEB営業という面にまで食指を伸ばすことができたのが非常に貢献していると思います」
https://www.itreview.jp/products/wordpress/reviews/77100
▼利用サービス:Wordpress
▼企業名:タイヘイ化成株式会社 ▼従業員規模:50-100人未満 ▼業種:製造業
短期間で高機能な自社サイトを立ち上げるのに便利です。
「プラグインを追加するだけで必要な機能を無料で導入できる点、ビジネスブログから店舗案内、会社案内とサイトデザインのバリエーションは多く、無料、有料に関わらず世界中のデザインを選択できる。小規模事業者にとっては、導入しやすいシステム。各種テンプレートもそろっていて、会社案内などで必要な項目を入れ替えるだけで良い」
https://www.itreview.jp/products/movable-type/reviews/5688
▼利用サービス:Wordpress
▼企業名:オフィスHANEDA ▼従業員規模:20人未満 ▼業種:デザイン・製作
イニシャルコストを大幅に削減
「営業担当者もサポートの方にも良くしていただき満足しています。ホームページ製作にかかるイニシャルコストがリース扱いの為、大幅に削減でき、ランニングコストも安く費用対効果がかなり高いと思います。イメージを伝えるとイメージ通りの案を提案いただき、その場で修正した物を見れるのでスムーズに製作が進みました。また、公開後は自分で手を加えることが出来るところが良いです」
https://www.itreview.jp/products/orikoublog/reviews/78606
▼利用サービス:おりこうブログ
▼企業名:株式会社サーモテクノス ▼従業員規模:20人未満 ▼業種:経営企画
テンプレートがいくつもあるので、作業効率がものすごく上がった
「HPを手軽にそして割と自由に作成することができます。使用できるテンプレートが豊富にあります。以前はGoogleサイトを使っていましたがWixの方が自分たちの思い通りのページを作ることができました。テンプレートがいくつもあるので、自分のイメージに合ったものがあるとそれをそのまま使うことができるので作業効率がものすごく上がりました。ある程度機能を理解することができれば、それなりに凝ったページを作り込むことができるので、様々なイメージに合わせたページ制作ができることがとても気に入っています」
https://www.itreview.jp/products/wix/reviews/59112
▼利用サービス:Wix
▼企業名:山崎石材工業株式会社 ▼従業員規模:20人未満 ▼業種:その他製造業
CMS導入のポイント
ツールによって機能や性能が異なるCMS。自社のWebブサイトを運用する上で、目的を達成できて継続的に効果を上げやすいCMSの見極めが必要です。CMS導入にあたって押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
1.目的の明確化
Webサイトを作成する目的をしっかりと明らかにしましょう。どのようなサイトにしたいのか、どれくらいのボリュームにまとめるのか、どういった機能を活用するかなどを検討し、サイト全体のイメージや達成目標などを明確にすることが重要です。
2.自社に合うツールであるか
種類によって使い勝手がまったく異なるのがCMSツールです。操作性の良し悪しで導入効果も変わってくるため、まずは使いやすさを確認しましょう。また、検討しているツールが自社の求めるツールであるのかどうかも重要です。しっかり製品の情報収集をしたうえで決断しましょう。
3.セキュリティの確認
導入前に、セキュリティを自社でどこまで重視するかを定め、目的に合わせたセキュリティの度合いを判断します。セキュリティを強化する必要がある場合には、きちんとセキュリティ対策が施されている製品を選びましょう。セキュリティに関する保証と初期費用のどちらを優先させるかが判断基準の1つです。
4.コストの確認
CMSの導入にはある程度のコストがかかります。そのため、希望のツールと自社のコストとが見合っているかどうかを確認する必要があります。
5.サポート体制の有無
サポート体制の有無も、CMSツールによって異なります。オープンソース型CMSはサポート体制がないに等しいといえます。商用パッケージ型CMSの場合であれば、適宜サポートを受けることができますが、自社の求めるサポート体制があるかどうかを必ず確認しましょう。
CMSの業界マップ
CMSのユーザーからの評価を知るには、ITreview Gridが便利です。ITreview Gridは、ITreviewに集まったユーザーのレビューをもとに生成された4象限の満足度マップで、顧客満足度と市場での認知度を掛け合わせた結果が、4象限上でのポジショニングとして確認できます。
おすすめのCMSツール5選
実際に、CMSツールを活用されている企業の方々のレビューが多い製品を中心に、おすすめのCMSツールを紹介します。
(2021年11月29日時点のレビューが多い順に紹介しています)
WordPress
「WordPress」は、一般のブログ作成者から大手企業まで多くのユーザーが使用するCMSツールです。2021年11月現在で、全世界のWebの42%がWordPressで構築されています。簡単な操作で文章の投稿や写真の追加、編集などさまざまな作業ができ、デザインテンプレートも豊富。手軽に美しいデザインに仕上げられます。自社でサーバ構築を行う方法が一般的ですが、レンタルサーバサービスを使う多くの企業でも利用可能なので、手軽に導入することができます。
おりこうブログ

累計導入実績1万8000件以上、ホームページ作成機能を中心にアクセス解析やメッセージ配信・カタログ作成など、多彩な機能をそろえています。1つの管理画面で作業でき、手間とコストを抑えたオールインワン導入も可能です。また生体認証によるログインなど、セキュリティ対策も万全。主なプランとその費用については、公式Webサイトからの問い合わせが必要です。
Movable Type
安全性や信頼性が評価され、国内5万サイト以上で導入されています。ブログ形式で簡単にサイト作成でき、機能が充実しています。官公庁や教育機関などのWebサイトでも活用されています。日本語での問い合わせができ、表示速度が速いのも魅力です。
a-blog cms
導入実績は4000件を超え、サポート体制が充実しています。運営会社自ら導入サポートを行い、トラブルシューティングにはビデオ通話を使ったサービスを展開。またWebサイトの作成初心者にも優しい仕組みで、ブログ感覚でスムーズな作成できます。さらに、セキュリティ面での脆弱性を排除しているのも魅力です。
ferret One

600社を超える企業に導入され、BtoBマーケティングに必要なコンテンツを網羅しているツールです。専門的な知識がなくてもサイトの作成が可能です。Webマーケティング専門メディアが運営しているため、蓄積したノウハウで快適・効率のよい運用ができます。PDCAを回せる設計にもなっており、プレゼン資料を作成するような感覚でWebサイトを運用できます。
ITreviewではその他のCMSも紹介しており、紹介ページでは製品ごとで比較をしながら導入ツールを検討できます。
まとめ
デジタルマーケティングを成功させるためには、自社のWebサイトを充実させることが重要です。効果的で充実したWebサイトをめざすCMSの導入は、デジタルマーケティングの効果を上げる起爆剤となるでしょう。CMS導入の際には、導入目的を明確化し自社に合うツールを選定すること。万全のサポートを約束するシステムベンダーと出会うことも大切です。