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国産MAベンダーのシャノン、カスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減に

海外ベンダー参入で市場はレッドオーシャン化、いかにして顧客の信頼を獲得したのか

 製品・サービス提供後も、顧客企業の成功を第一として積極的に伴走を続ける「カスタマーサクセス」を取り入れようとする動きが日本でも活発化し始めている。本連載ではカスタマーサクセスに取り組む企業とその立役者を連載形式で取り上げ、具体的な施策やうまく推進するための秘訣などを紹介する。


 国内における導入実績数900以上、キャンペーン実績数は実に22万以上――。国産MA(マーケティングオートメーション)の「SHANON MARKETING PLATFORM」(以下 SMP)を提供するシャノンは、MAという呼称が登場する前から、イベント/セミナーソリューションをはじめとするマーケティングソリューションを提供し、国内では多くの顧客の支持を得ていた。しかし2015年頃から外資系MAベンダーが相次いで日本に進出。次第に他社に乗り換える顧客が増加していった。

 その危機的ともいえる状況を救ったのが、カスタマーサクセスを実践する同社のアカウントセールス部だ。2018年度に、これまでの既存顧客担当組織が担う役割において方向性の舵を大きく切り、1年間、ほぼ全てのお客さまを対象にカスタマーサクセスへの取り組みを行った。その結果、前年比で実に7割もの解約数を低減することに成功したという。同社のアカウントセールス部のメンバーは、いかにして顧客の信頼を獲得していったのか? 陣頭指揮を執るアカウントセールス部 部長 高橋良介氏にお話を伺った。

日本のMA市場はブルーオーシャンからレッドオーシャンに。契約を維持/拡大するカスタマーサクセスに注力

――日本では、専門的にカスタマーサクセスの取り組みを行う部署がある企業はまだ少ないといえます。貴社の場合、カスタマーサクセスを実践するアカウントセールス部はどのような経緯で、いつ組織化されたのでしょうか?

高橋氏: 既存のお客さまを担当する営業部を、アカウントセールス部という呼称に変更したのは、ちょうど1年前の2018年です。シャノンの製品はイベント、セミナーで昔からよく使われており、月額費用のサービスでも、一度契約を結べば解約されることは比較的ありませんでした。ですから、カスタマーサクセスのような活動はしなくても、ビジネスは成長できたのです。ところが2015年あたりから、日本のMA市場に外資系の競合が進出。ブルーオーシャンがレッドオーシャンになり、少しずつ解約が目立ち始めてきました。そこで、月額契約の維持/拡大を主たるミッションとする部門として、アカウントセールス部が立ち上がりました。

株式会社シャノン アカウントセールス部 部長 バイスプレジデント 高橋良介氏

――どのくらいの顧客数に対し、何人でカスタマーサクセスを実践されているのでしょうか?

高橋氏: 新規営業部門で受注したお客さまを私たちアカウントセールス部のカスタマーエンゲージメントマネージャー(以下 CEM)が引き継ぐのですが、お客さま数は総数でおよそ300ドメインです。1社で複数のドメインを持っていらっしゃるケースもあるので、お客さま数の単位はドメインとしています。その300ドメインを6人のCEMでカバーしていますので、1人当たり約50ドメインを担当していることになります。CEMはお客さまに対するSMPの活用支援を通じて、できるだけ長く使っていただくための活動をしながら、一方で毎月迎えるそれぞれのお客さまの契約更新のための提案活動を行っているので、結構忙しいですね。

――そのような状況の中で、貴社ではお客さまの声をどのように集めて、それをどのように活用していらっしゃるのでしょうか?

高橋氏: 6人のCEMは、その名の通り、お客さまとのエンゲージを深めていく役割を持ちます。比較的契約金額の大きな層のお客さまに対しては、月1回の定例のミーティングを設定するなどし、そこで直接ご意見やご要望を伺うようにしています。定期的なコンタクトでご支援するのは、全体で30ドメイン程度です。個別のお客さまの環境を把握した上で、マーケティング課題、施策を伺い、シャノンで可能な支援を文書にまとめて、お客さまと共有します。基本合意をしたら、3カ月に1回のスパンで「ご支援計画書」というアクションプランを作成しお客さまと合意するケースもあります。四半期ごとにご支援計画書の前四半期の実施結果のご報告と、次四半期の計画の立案、合意を行います。

 その他、カスタマーサポートの窓口に頂戴するご意見も重要な情報源となります。CEMは、お客さまへの計画的な訪問に加え、サポート窓口にお問い合わせいただいたお客さまへも、内容によっては対応し、課題への解決策や新機能の紹介などを行っています。

シャノンのオフィスの様子

――直接訪問しお客さまの声を伺うことの他に、お客さまとの日頃の接点を増やし、より多くの声を集めるために実施されていることはございますか?

高橋氏: シャノンユーザーカンファレンスというユーザーさま向けのイベントを年1回開催し、多くのユーザーさまにお越しいただいております。このカンファレンスでは、当社社長によるシャノンの向かう方向性のプレゼンに始まり、製品開発の方針/新機能紹介/ユーザーさまによる事例紹介などをアジェンダとして実施しています。その後、懇親会によるネットワーキングの場もご出席者の方にご提供しております。その他、月に2~3回の頻度でシャノン製品の研修をユーザーさま向けに実施しております。

――そのようにお客さまから集めた声を「プロダクトの改善に生かす」といったケースもあるのでしょうか?

高橋氏: もちろん、あります。お客さまからのご要望を製品化するプロセスとしては、2つあります。1つは「製品要望受付」になります。こちらは、比較的開発投資が大規模、中規模の案件について、経営の観点と全社的な見地で実装の優先順位が決められます。メンバーは製品企画と製品開発を行う技術部中心に選定され、最終的には経営会議で決議されます。もう1つは「エンハンス(改善要望)」になります。比較的小規模な開発で解決できるような内容は、月1回のエンハンス会議で議論され、製品への実装がなされます。こういった仕組みをベースに、SMPはこれまで800を超える機能を実装しております。

KGIは月額費用を維持、あるいはプラスにすること。カスタマーサクセス実践後、解約件数は7割減に

――貴社の場合、カスタマーサクセスのKPIはどこに設定していますか?

高橋氏: 月額費用の金額を維持する、あるいはプラスにする。これがまずKGIとして大目標になります。それを実現するためのKPIとしては、四半期ごとの「ご支援計画書」の合意を年何回行うとか、定例ミーティングを毎月行えたかどうかなどが指標になっています。当たり前のことですが、お客さまの契約更新は、お客さまの決算の時期とは必ずしも連動していません。そのため、お客さまの予算確保時期を全件確認する、決裁者はどなたかを確認するということは、KPIというよりは、必ず押さえなければならないポイントになります。結果的にCEMは、月額費用の維持/向上を最優先事項として、そのための活動に多くの時間を割いています。

――カスタマーサクセスの活動を行う前と、そのようなKPIを掲げて1年間活動を行った後では、どのような変化がありましたか?

高橋氏: カスタマーサクセスの活動を行う以前は、年間でかなりの解約がありました。1年間はほぼ全てのお客さまへのカバレッジを行ったので、目に見えて解約は減少しました。解約件数でいうと、およそ7割減。3分の1になりました。特に、比較的契約金額の大きなお客さまへのカバレッジ活動を厚く実践したので、この層の解約はほぼなくなってきました。これは明らかに、カスタマーサクセスを実践した成果であるといえるのではないでしょうか。

「使えない」になる前に――月額費用を下げてでも、お客さまからの信頼を取りに行くことも

――いかにカスタマーサクセスの実践が効果的といえども、活動を開始して1年でそこまでの成果はなかなか得られないと思います。何がポイントとして挙げられるのでしょうか?

高橋氏: 基本的な流れとして、当社の新規の営業部門が最初に受注し、導入までを担当します。導入後、お客さまはアカウントセールス部に引き継がれます。アカウントセールス部のCEMはEWS(Early Warning System)というお客さまの利用状況可視化の仕組みによって、導入されたお客さまの利用状況を把握することができます。契約上は利用可能なのに、その中で限られた機能しか使っていないお客さまに対して、CEMは、月額費用を維持/向上するというKPIがあるものの、契約更新時にあえて使用していない機能をダウングレードすることもあります。

 たとえ月額費用が下がっても、お客さまがより長期間の利用を続けていただければ、会社としてはプラスになるという判断です。当社の方から進んで使っていない機能をダウングレードする提案をさせていただくような真摯な姿勢をお見せすることで、お客さまは「損得ヌキで、ユーザーのことを考えてくれている」と感じてくださり、さらなる信頼を勝ち得ることができ、結果的に解約を阻止できるポイントの1つになる、そう思っています。

――なるほど。目先の利益よりも、お客さまからの信頼が大切ということですね。逆に、貴社がカスタマーサクセスを実践する上で、課題と感じていらっしゃることはありますか?

高橋氏: 手探りの状態で始めてまだ1年ですから、課題はたくさんあります。アカウントセールス部の人手が足りていないので、新規営業からお客さまをタイムリーに引き継げないケースもあり、課題の1つとなっています。導入後、速やかに運用に入りませんと、お客さまのせっかく盛り上がった導入機運も下がってしまい、逆に経営層からは導入成果を求められるような状況になることがあります。初めてCEMが訪問した際に、いきなり解約の相談をお受けすることが実際にあります。そういった状況を打開し、速やかかつスムーズな引き継ぎを行うために、引き継ぎプロセスを標準化しました。また、毎月次で新規営業とアカウントセールス部のリーダーが案件状況を情報共有する会議も始めました。

 また、誰がカスタマーサクセスを担当しても、お客さまに同じ品質で対応できるようにするというのも、これからの課題です。今までCEMは、個々のやり方で活動を行っていました。これを基本的な部分については、テンプレート化していこうとしています。カスタマーサクセスプロセスの標準化を進めることが、少ない人数で生産性を上げる策にもなると思っています。

ユーザーコミュニティーも2018年末に立ち上げ、次の1年は攻めのカスタマーサクセスを実践

――カスタマーサクセスを実践する企業は、ユーザー同士が交流できるコミュニティーという仕組みを持っているところが少なくありません。貴社の場合は、いかがですか?

高橋氏: 1年間活動を行ってみてカスタマーサクセスが効果的だと実感できたので、次の1年はさらに攻める年にしたいと思い、2018年末にユーザー会を立ち上げました。ユーザーさまとメーカーという視点だけでなく、ユーザーさま同士での情報交換を通じて、マーケティング活動にお役立ていただいたり、シャノン製品の活用度を向上したり。そのような場が必要というお客さまの声を踏まえて、このシャノンユーザー会を発足させました。コアとなるユーザーさまに幹事になっていただき、隔月でユーザー会を開催していく予定で、少人数でのディスカッションと勉強会を交互にやろうと計画しています。ツールも用意して、そこで「こんな使い方している」「こんな時はどうすれば?」など、ユーザーさま同士がシャノンを通さずにコミュニティーを活用され、ご利用を促進していただくことをイメージしています。

 シャノンのCEMは、通常の営業活動に加えて、日々、運用相談などのご支援も行っております。そのようなご支援活動に加えて、ユーザー会におけるユーザーさま同士の情報交換、相互触発は、私たちにとって大きな財産になると考えています。先日、第1回のユーザー会を開催させていただきました。その場では活発な議論が繰り広げられ、当社としても手応えを感じているところです。

取材にご対応いただいたシャノンの製品レビューはこちら

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