とても身近な存在になってきた「Web会議システム」。ただし、日々の仕事で必ず使うツールではないので、知らないことも意外と多い。その一つが、無料で使えるシステムと有料のシステムとの違いである。その点をクリアーにしておかないと、Web会議システムを正しく選び、活用することは難しい。ということで、Web会議システムの無料版と有料版の違いについて一から確認する。
無料で使えて評判のWeb会議システムとは?
Web会議システムは、インターネットを介して音声・ビデオによる会議を可能にするシステムことである。本記事では、無料と有料のWeb会議システムの違いにフォーカスを当てる。
ということで、まずは、無料で使えて、評判の高いWeb会議システムを6つほどリストアップしてみたい。
1.Zoom Meetings
アカウント不要で誰とでもすぐにWeb会議ができる人気ツール

Zoom Meetingsは、マルチデバイス対応のビジネス向けビデオ会議&チャットツール。アカウントを作成することなく、URLの発行のみで、誰とでも手軽にビデオ会議やチャットが行える点を特徴とする。
無償の「基本(ベーシック)」版と、有償の「プロ」版、その上位の「ビジネス」版、最上位の「企業(エンタープライズ)」版をラインアップ。無償版でも、HDビデオをサポートし、ローカルディスクへの会議のMPEG-4録画をサポートするほか、100人の参加者までのホストが可能。SSL 暗号化やAES 256ビット暗号化による通信内容の保護も実現している。
ただし、無償版ではグループミーティングの時間が40分までに制限されているほか(プロ版以上は実質無制限)、ユーザー管理(ロールの追加、削除、割り当てなど)の機能や使用状況レポートの生成、高度なミーティング管理機能、クラウドへのMPEG-4/M4Aムービー記録といった機能はサポートされていない。
2.Whereby
手軽さ、簡単さを特徴とするWeb会議ツール

Whereby(旧称appear.in)とは、Zoom Meetingsと同様に、URL発行のみでビデオチャットができるWeb会議ツールだ。ホストがアカウント登録を行えば、ゲストはURLをクリックするだけで会議に参加できる。
また、画面共有、マイクとカメラのオン/オフ、テキストチャット、部外者が参加しないためのLock機能、画面上にスタンプを表示させるStickerなど、Web会議システムの標準的な機能も網羅的にサポートしている。
無料版の「Free」と有料版の「Pro」「Business」の3つのライセンス形態があり、無料版では1対1でのミーティングのみが行え、グループでのWeb会議が行いたい場合には、Pro以上のライセンスが必要とされる。なお、Proではグループミーティングの参加者が4人までに制限されているが、Businessでは、参加者に制限はない。
3.Cisco Webex Meetings
画像の滑らかさやノイズを低減した音声の聞き取りやすさが特徴

Cisco WebEx Meetingsは、アプリのダウンロードやプラグインが不要で、デバイスに関係なく、いつでも誰とでも会議が行えるWeb会議システム。画像の滑らかさやノイズを低減した音声の聞き取りやすさを特徴とする。Zoom Meetingsと同じく、会議のMPEG-4録画もサポートするほか、資料の共有、ホワイトボード機能、アンケート機能を備える。
無料版と小規模チーム向けの「Starter」、中規模チーム向けの「Plus」、大規模チーム向けの「Business」という4つのライセンス形態があり、無料版でも通信内容・録音ストレージのAES 256 ビット暗号化、「Personal Room 」のロックといったセキュリティ機能を持つ。
ただし、無料版では会議参加者の数が最大50名までに制限されているほか、使用可能なクラウドストレージが1GBまでにグループミーティングの時間も40分にそれぞれ制限されている。有料版のStarterでも、会議参加者の数は50名までとなっているが、グループミーティングの時間に実施的な制限はなく、クラウドストレージの容量も5GBまで利用できる。さらに、Cisco WebEx Meetingsでは、Business版で200名参加の会議が催せるほか、オプションで最大1,000名参加の会議が催せるという拡張性も特徴としている。
4.ハングアウト Meet
グループウェアG Suiteを構成するGoogle純正のビデオ会議ツール

ハングアウトMeetは、Googleが提供するWeb会議システムで、グループウェア「G Suite」を構成する機能の1つ。会議を設定して、URLを参加メンバーに共有するだけでビデオ会議が行える。会議への参加メンバーにはアカウントやアプリは必要ではなく、Webブラウザを通じて、誰でも会議に参加できる。
G Suiteは有料のサービスで、無料版は用意されていない。無料試用も14日間とどちらかといえば短い。ただし、無料の Google アカウントから、ハングアウトMeetの基本機能は使いことができ、最大10人までのビデオ会議(ビデオ通話)が行える。とはいえ、無料のGoogleアカウントでは、管理機能(ユーザー管理やセキュリティ管理など)は使うことはできない。あくまでもパーソナル、あるいはビジネスパーソナルでの用途を想定した仕様になっている。
5.Chat&Messenger
「無料でも多機能」が売りのビデオ会議機能付きグループウェア

Chat&Messengerは、G Suiteと同様の統合型グループウェアで、機能の一つとしてWeb会議の機能を提供している。この機能はモバイルデバイスにも対応し、ビジネスチャットと連携したビデオ通話、デスクトップ画面共有などの機能を備えている。また、クライアントユーザーの自動認識機能もサポートされている。
Chat&Messengerは大きくオンプレミス版とクラウド版に分かれ、ともに無料版と有料版が用意されている。クラウド版では、無料版と、有料の「Standard」「Enterprise」「Ultimate」という計4つのエディションが用意され、無料版でも、ビジネスチャット、ビデオ通話、ファイル共有・文書管理、掲示板、回覧板などの機能が利用できる。
ただし、無料版では、1対1でのビデオ通話にしか対応しておらず、3人以上の人数でのビデオ会議には有料版の使用が必要とされる。また、チャットルームについても、無料版では合計 5 つまでしか利用できない。このほか、ユーザー管理・施設予約、暗号化キー指定、IPアドレス制限などの機能も有料版からのサポートとなる。
6.Blizz Collaboration Companion
国際標準規格ISO2001認証

Blizz Collaboration Companionは、パソコンやモバイルデバイスにアプリをインストールして使うタイプのWeb会議システムである(会議に参加者するだけであれば、アプリは不要)。ビジネスチャットと一体化されており、会議のスケジューリングや会議における4K画質での画面共有といった機能を備えている。国際標準規格のISO2001の認証を受けており、AES256ビット暗号化による通話内容の保護も実現している。
ライセンスの形態は、無料版と有料の「CORE」「CREW」「COMPANY」の4つに分かれている。無料版ではグループミーディングの人数が5名までに制限され、ユーザー管理の機能も有料版のみにサポートされる。
無料のWeb会議システムを使ううえでの心構え
ご承知の通り、物事には全て理由があり、無料のWeb会議システムが無料で提供されているのにも、もちろん理由がある。その理由を考えていくと、無償のWeb会議システムを選び、使ううえでの留意点も見えてくる。
言うまでもなく、Web会議システムの開発・提供元は、ほぼ全てが営利企業であって、非営利団体ではない。ゆえに稼がなければならず、Web会議システムを無料で提供するにしても、それが収益につながらなければ意味はない。そのため、無料のWeb会議システムは、多くの場合、有料版の“試供品”といえるような作りになっている。要するに、有料版の良さを訴求しつつ、有料版に移行したくなるような機能制限がかけられているのが通常ということである。逆にそうだからこそ、有料製品/サービスの無料版には、一定の機能・性能も期待できる。理由はシンプルで、無料版の機能・性能が劣悪であれば、有料版に移行しようという利用者の意欲は喚起できず、それどころか、有料版の評価も落とし、無料版の提供が逆効果をもたらす結果になるからである。
もちろん、無料版はあくまでも“試供品”なので、それをビジネスに本格的に使おうとすると、さまざまな機能の不足や問題に気付くはずである。
では、無料版のWeb会議システムには、総じて、どのような機能の制約や問題があるのだろうか。次にその辺りを確認しながら、有料版を使うメリットについて考えていきたい
有料のWeb会議システムを選ぶメリット
無料版のWeb会議システムに共通して見られる制約の一つは、会議人数の制限である。なかには、1対1のビデオ通話の機能しか提供していないものもある。また、ビデオ会議の時間についても制約を設けているシステムもある。
Web会議システムを使うそもそもの利点は、場所や時間の制約を受けずに会議をしたいメンバーと自由にビジネスミーティングが行えることにある。その意味で、無料版のWeb会議システムを使い続けている限り、そうした利点をほとんど活かせないことになる。
さらに、無料版のWeb会議システムの場合、ユーザー管理の機能を持っていないのが一般的である。
Web会議システムを利用するユーザーの登録/削除、ID/パスワードの管理といたユーザー管理の機能は、システムの使い勝手を増すものではないが、会社がシステム利用の統制やセキュリティを確保するうえでは大切な仕組みといえる。例えば、ユーザー管理の機能がないと、会社を辞めた人間のアカウントを消去し忘れるといった管理上の単純な漏れやミスも起こりやすくなる。ゆえに、有料のWeb会議システムの大多数は、ユーザー管理の機能を備えているが、無料版ではその機能が提供されていないことが通常なのである。
ちなみに、社内に設置されたリアルなミーティングスペースや会議室は、物理的に外部から切り離され、特にルールを設けなくても、利用者は自ずと従業員に限定され、第三者が勝手に出入りすることはほぼ不可能で、会議の内容が盗聴されたり、盗み見されたりするリスクも低い。ところが、Web会議システムによって仮想的に創られたインターネット上のミーティングスペースは、暗号化やユーザー認証による情報の保護策を講じないと、第三者による侵入・盗聴のリスクが大きくある。それゆえに、Web会議システムでは、無料版においても通信の暗号化といったセキュリティ機能を提供しているものが多いが、有料版との間で相応の機能差があるシステムもある。その意味でも、無料版ではなく、有料版のWeb会議システムを導入したほうが安全であり、安心といえるである。
ITreviewでは、そうした点を踏まえたうえで、Web会議システムのカテゴリーページでは、人気の高いシステムと、そのレビュー情報を豊富に紹介している。これからもぜひ、ご活用いただきたい。