社内外の相手にファイルを送信したい時にはメールにファイルを添付して送っている方が多いかもしれません。また従来、メールの容量制限で送れない大容量の図面や動画データなどは、USBメモリやCDなどの記録媒体に保存して渡すことが多かったかと思います。
メールの場合には、一旦送ってしまうと送信の取り消しができないため、送信先の間違いによる情報漏えいのリスクがあります。また、USBやCDなどの記録媒体は紛失する可能性もあり、使用を禁止している企業も増えています。
そこで、注目されているのがオンラインストレージによるファイル共有です。大容量データでもオンラインストレージを使えば、簡単にファイル共有することが可能です。
オンラインストレージを使ってファイル共有するには、まず送信したいデータファイルをオンラインストレージにアップロードし、ファイル共有リンクを取得します。多くのオンラインストレージでは、ワンクリックで取得可能です。さらに、ファイル共有リンクを作成する際には、アクセスできるユーザーの選択、パスワードや有効期限、ダウンロードを無効にするなどの設定を行うことができます。ファイル共有リンクの設定が終われば、あとは、データを渡したい相手に取得したファイル共有リンクを送るだけです。
メールの場合には、一度送ってしまえば相手にファイルが届いてしまい、取り消すことができません。しかし、オンラインストレージを使ってファイル共有した場合には、ファイルはオンラインストレージ上に保存されたままなので、ファイル共有リンクを送る宛先を間違えても、取り消すことが可能です。
最近は、オンラインストレージのサービスやプランが多くてどの様に選べば良いかわからないといった声もよく聞くようになりました。本記事では、法人でファイル共有する場合に人気のオンラインストレージを5つ紹介します。まずは、ファイル共有に使うオンラインストレージサービスを選択する上で検討が必要な6項目についてみていきましょう。
目次
ファイル共有用のオンラインストレージを導入する前に検討が必要な6つのこと
法人でファイル共有する場合には、次の6項目を検討した上でオンラインストレージサービスを選択することをおすすめします。
1. 利用するストレージ容量
オンラインストレージサービスには、さまざまなサービスやプランがあります。一般的に無料プランのオンラインストレージサービスは利用できるストレージ容量に制限があります。無料プランのまま利用し続けるとストレージ容量が不足して、ファイル共有ができないなど、ビジネスに支障をきたす可能性があります。
法人であれば、業務に支障のない十分なストレージ容量を使用できるサービスやプランを利用するべきでしょう。あらかじめ、使用するストレージ容量がどのくらいになるのか予測を立てることが必要です。
2. 利用するユーザー数
法人の場合多くは、自社や協力会社のプロジェクトメンバーで仕事をしています。すべての関係者に対してファイル共有するとなると、多くの利用者登録が必要となる場合もあります。社内だけでなく社外メンバーも含めて、利用者数が何人になるか確認しましょう。
3. 情報セキュリティポリシーとの適合性
法人では新商品・サービスの情報など外部に漏れてはならない機密情報を所有しています。この場合、共有するファイルのアクセス権限を社内と社外のメンバーで別々にしなければなりません。
社員と社外メンバーでアクセスできるデータに制限を設ける、担当部署以外の社員は閲覧できるが編集はできないようにするといった、ファイルやユーザーごとにアクセス権を管理する必要があるかもしれません。
また、誰がどのような操作をどのファイルに対して行ったか確認するためのアクセスログの保管も必要かもしれません。
オンラインストレージサービスはプランによって、セキュリティ対策や管理機能が異なります。どこまでのセキュリティ機能が必要かは、自社の情報セキュリティポリシーを確認しましょう。
4. 利用するデバイス
営業職などは外出先から、オンラインストレージを利用するメンバーもいるでしょう。これらのメンバーがインターネットを介してアクセスする場合に、どのようなデバイスでアクセスするのか確認する必要があります。
インターネットブラウザ経由でオンラインストレージを利用も可能ですが、スマートフォンやタブレットに対応するアプリを利用した方が利便性が高い場合があります。デバイスによってはアプリが用意されていない場合もあるため、利用するデバイスを確認しましょう。
5. 操作性
ファイルのアクセス権設定やアプリなどの操作が難しいと、せっかく導入したオンラインストレージの機能をうまく活用できない場合があります。また、導入時に社内教育にコストがかかる場合もあります。
したがって管理者コンソールの使い勝手やファイル共有を直感的に行えるサービスであるかどうかを事前に検討することをおすすめします。操作性を確認するだけなら、まずは無料プランを試用してみるのも一つの方法です。
6. コスト
法人でオンラインストレージを導入する場合に、気になるのはやはりコストです。オンラインストレージを利用するには、月額の使用料だけでなく、管理者やユーザーの教育、利用できるデバイスの用意、インターネットに接続できる回線に費用がかかる場合もあります。
オンラインストレージの導入時には各要素にかかるコストをよく検討し、自社の必要とする機能とコストのバランスの取れたサービスを導入することをおすすめします。
法人でファイル共有をする際に人気のオンラインストレージサービス5選

法人でファイル共有するために人気のオンラインストレージサービスを5つ紹介します。
1. Box

BoxはBox社が提供するオンラインストレージサービスです。セキュリティ面での機能が高く、データ容量が無制限のプランがあるなど主に企業を中心に採用されています。
各プラン別の選択基準に従った特徴は次の通りです。
| プラン名 | Starter | Business | Business Plus | Enterprise |
| ストレージ容量 | 100GB | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
| ユーザー数 | 最小3人~最大10人 | 最小3人~上限なし | 最小3人~上限なし 社外コラボレータ無制限 | 最小3人~上限なし 社外コラボレータ無制限 |
| 情報セキュリティ、権限管理機能 | ・ユーザーごとのアクセスレベル設定 ・バージョン追跡 ・SSL暗号化 |
※Starterの機能に加え ・データ損失防止 ・ユーザー統計と追跡 |
※Businessの機能に加え 管理役割の委任 カスタムサービス利用規約 |
※Businessの機能に加え 文書の電子透かし埋め込み パスワードポリシーの施行 |
| 対応デバイ操作性 | デスクトップ、モバイルアクセス可能 | Active Directorとシングルサインオンを統合 | メタデータ機能による検索フィルタ | ワークフロー自動化 |
| コスト | 550円 ユーザー/月 |
1,800円 ユーザー/月 |
3,000円 ユーザー/月 |
契約内容による |
(上位のプランは、下位のプランの機能がすべて含まれます)
2. DirectCloud

DirectCloud は、ユーザー数が無制限で、かつ管理者機能が充実したリーズナブルなオンラインストレージとして利用者数が増加しているサービスです。
各プラン別の選択基準に従った特徴は次の通りです。
(情報セキュリティ以降の項目については右のプランは左の機能がすべて含まれます)
| プラン名 | スタンダード | アドバンスド | ビジネス | プレミアム | エンタープライズ |
| ストレージ容量 | 500GB | 1TB | 3TB | 10TB | 30TB |
| ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
| 情報セキュリティ、権限管理 | ワンタイムパスワード(二要素認証) アクセスレベル設定(17段階) 大量ログ情報の表示 | 国内DC利用 サービス品質保証(SLA) AES、SSL暗号化 ウイルス検知 不正アクセス監視 操作ログ監視 | 管理者操作ログ | ||
| 対応デバイス、操作性 | ワークスペースによるデータ共有可能 エクスプローラによるファイルの直接編集 | リンクを使ったファイル送受信 | 社内拠点および社外とのファイル共有 既存システムとのAPI連携 Active Directory認証、 シングルサインオン認証 プライオリティサポート(電話、遠隔操作) 副管理者権限 | ||
| コスト | 30,000円/月 | 50,000円/月 | 90,000円/月 | 180,000円/月 | 300,000円/月 |
(上位のプランは、下位のプランの機能がすべて含まれます)
3. Dropbox Business

Dropboxは全世界で5億人が使用しており、世界的なシェアを誇るオンラインストレージサービスです。使いやすく、シンプルなデザインと、情報共有がスムーズで同期が高速なところが評価されています。
Dropboxは無料版もありますが、データ容量が2GBしかなく、法人には向いていません。法人向けには有料版のDropbox Businessをお勧めします。
各プラン別の選択基準に従った特徴は次の通りです。
| プラン名 | Standard | Advanced |
| ストレージ容量 | 5TB | 必要に応じ増加可能 |
| ユーザー数 | 3人~ | 3人~ |
| 情報セキュリティ、権限管理 | 256ビットAES暗号化 SSL/TLS暗号化 180日データ復元 | デバイスの承認 閲覧者履歴 管理者役割の階層化 ファイルイベント監査ログ |
| 対応デバイス、操作性 | デスクトップ、モバイルアクセス可能 共有・共同作業ツール 電話サポート | 代理ログイン シングルサインオンとの統合 |
| コスト | 1,250 円 ユーザー/月 | 2,000円 ユーザー/月 |
(上位のプランは、下位のプランの機能がすべて含まれます)
4. OneDrive for Business

OneDriveはMicrosoftが提供するオンラインストレージサービスです。Microsoftが提供するサービスであるため、WindowsやOffice365との連携や共同編集機能にすぐれ、初心者でも使いやすいインタフェースを持っているのが特徴です。個人向けの無料版がありますが、法人向けには有料のOneDrive for Businessが用意されています。
各プラン別の選択基準に従った特徴は次の通りです。
| プラン名 | Plan1 | Plan2 | Office365 Business Premium |
| ストレージ容量 | 1 TB | 無制限 | 1TB |
| ユーザー数 | 1人~上限なし | 3人~上限なし | 1人~300人 |
| 情報セキュリティ、権限管理 | セキュリティを維持しながら組織内外の相手とのファイル共有可能 | Plan1に加えて データ損失防止(DLP) インプレースホールドを使用した削除済み、編集済みドキュメントの保持 | Plan1に加えて 法人メールホスティングと50GBのメールボックス 独自ドメインのメールアドレス設定可能 |
| 対応デバイス、操作性 | デスクトップ、モバイルアクセス可能 Office.comによるブラウザ上でのドキュメントの作成と編集 ローカルPCの同期とオフライン編集機能 組み込み検索、検出ツール 24時間電話/Webサポート | Plan1と同じ | Plan1に加えて Officeソフトユーザー1名あたり5台のデバイスにインストール可能 Outlook、Word、Excel、PowerPoint、OneNote (Access と Publisher は Windows PC のみ) |
| コスト | 540 円 ユーザー/月 | 1,090円 ユーザー/月 | 1,360円 ユーザー/月 |
5. Google Drive

Googleが提供するオンラインストレージサービスです。Googleが提供するGmailやカレンダー、Googleドキュメントやスプレッドシート、チャットツールの「Hangout Chats」、ビデオ会議ツールの「Hangout Meet」との連携が可能です。
法人向けには、前述のツールと管理コンソール、オンラインストレージを一体で提供する「G suite」としてサービスを提供しています。
各プラン別の選択基準に従った特徴は次の通りです。
| プラン名 | Basic | Business | Enterprise |
| ストレージ容量 | 30GB | 無制限 | 無制限 |
| ユーザー数 | 5名~100名 (同時音声会議参加者数) | 5名~150名 (同時音声会議参加者数) | 5名~250名 (同時音声会議参加者数) |
| 情報セキュリティ、権限管理 | 128 ビット以上の AESによる暗号化 SSL暗号化 管理コンソールによる高度な保護機能 | VALUTによるデータ保持機能 監視レポート機能でユーザーのアクティビティを確認 | データ損失防止(Gmail、ドライブ) BigQueryによるログ解析 高度な保護機能プログラム |
| 対応デバイス、操作性 | 24時間電話、メール、オンラインサポート Googleアプリケーションが使用可能 モバイルデバイスをリモートで管理するエンドポイント管理 | G suiteを横断的に検索するSmart Search機能 | Cloud Identity Premium によるユーザー、デバイス、アプリの管理 |
| コスト | 680円 ユーザー/月 | 1,360円 ユーザー/月 | 3,000円 ユーザー/月 |
オンラインストレージ選びは慎重に!
法人でオンラインストレージを選ぶ際は、月額コストやユーザー数、データ容量だけで決めるのではなく、使用目的に合ったセキュリティや権限の管理、ユーザーの操作性や対応するデバイスについても慎重に検討する必要があります。
自社に最適なオンラインストレージサービスを選択するには、スペックを比較するだけではなく、すでにサービスを導入したユーザーの口コミを確認することもおすすめします。