近年、企業のIT製品選定においては「新しい選択肢をどう見極めるか」が大きなテーマになっています。特に昨今では、生成AI、AI議事録、AIエージェント、現場DX、サードパーティリスク管理、AI検索対応など、企業の業務を支える製品領域は拡大を続け、年々比較検討の難易度も高まっています。

その中で注目したいのが、ITreviewの「The Best Software in Japan 2026」における新興製品部門「Rookie of the Year」の存在です。本部門は、2024年以降に日本市場に登場した製品の中から、レビュー数や満足度、製品ページへの関心などをもとに、今後の成長が期待される製品を紹介する部門です。

そこで本記事では、この「The Best Software Rookie of the Year」をもとに、各製品のランキングや評価されているポイントの解説から、現代のSaaS市場に流れているトレンドを考察・分析していきます。変化の激しい時代で、SaaS導入担当者が製品選定で確認すべきポイントを一緒に紐解いていきましょう。

「The Best Software in Japan」とは?

『The Best Software in Japan』とは、SaaSのレビュープラットフォーム「ITreview」に投稿されたユーザーレビューや製品情報をもとに、日本国内で高い評価を得たSaaS・ソフトウェア・ITサービスをランキング形式で発表する年に一度の目玉企画です。業界内外からも大きな注目を集めています。

昨年のランキングでは、約13,000製品の中から満足度と認知度に優れたTOP100製品を選出いたしましたが、今年はITreviewに掲載されている製品数が約15,000製品へと拡大を続けていることもあり、より多くの候補の中からユーザー評価の高かったTOP100製品を選出する運びとなりました。

また、2026年のランキングでは、スコア算出ロジックとして、新たに「AI活用による業務実行度」や「比較ページのトラフィック数」といった指標が相対的に強化されており、昨年までの採点基準と比較して、より実利用に即した評価ロジックの調整が行われています。

項目 内容
対象期間 2025年4月~2026年3月
評価対象 ITreviewに掲載されているSaaS・ソフトウェア・ITサービス
選出製品数 TOP100製品
主な評価軸 満足度/認知度/レビュー数/機能性/使いやすさ/サポート品質など
併設部門 The Best Software Rookie of the Year (新興製品部門)
The Best Software by Category (カテゴリー部門)
The Best Software for AI-Powered Features (生成AI部門)

「Rookie of the Year」とは?

新興製品部門の「Rookie of the Year」では、2024年以降に日本市場に登場した新しい製品の中から、レビュー数や満足度、製品ページへの関心などをもとに、今後の成長が期待される製品を紹介する部門です。成熟した定番製品だけではなく、ローンチ初期の段階からユーザーの評価を集めている製品や、特定の業務領域で急速に注目を高めている製品が対象になります。

項目 内容
対象期間 2025年4月~2026年3月
評価対象 2024年以降に日本市場に登場した新製品
選出製品数 TOP10製品
主な評価軸 満足度/認知度/レビュー数/機能性/使いやすさ/サポート品質など

「Rookie of the Year」ランキング上位TOP10製品

順位 製品名 提供企業 主なカテゴリー レビュー数 満足度 総合得点
1 弥生会計 Next 弥生株式会社 会計ソフト 123 4.1 620.44
2 Gemini for Google Workspace グーグル合同会社 文章生成AI 48 4.4 499.18
3 LINE WORKS AiNote LINE WORKS株式会社 AI議事録自動作成ツール 41 4.1 469.18
4 JAPAN AI AGENT JAPAN AI 株式会社 AIエージェントツール 33 4.1 466.42
5 AKARUMI(アカルミ) 株式会社ipe AEO・GEO・LLMOツール 9 4.9 457.21
6 ナレフルチャット CLINKS株式会社 文章生成AI 10 4.3 455.66
7 Genspark MainFunc プレゼンテーション 12 4.2 438.72
8 AI JIMY Converter シー・システム株式会社 文章生成AI 18 3.9 435.07
9 バクラク勤怠 株式会社LayerX 勤怠管理システム 5 4.3 435.01
10 カミナシ 設備保全 株式会社カミナシ 設備保全管理システム 8 4.3 434.30

第1位:弥生会計 Next

ルーキー部門の第1位は、弥生株式会社の「弥生会計 Next」です。メインカテゴリーは会計ソフトで、レビュー数は123件、満足度は4.1、総合得点は620.44でした。

項目 内容
製品名 弥生会計 Next
提供企業 弥生株式会社
カテゴリー 会計ソフト
レビュー数 123
満足度 4.1
総合得点 620.44

「弥生会計 Next」が評価された要因

弥生会計 Nextは、会計業務のクラウド化やバックオフィス効率化の機能が高く評価されています。会計業務は、請求、支払、仕訳、経費処理、決算、税務対応など、企業活動の基盤となる業務です。正確性が求められる一方で、紙や表計算ソフト、属人的な確認作業が残りやすい領域でもあります。

特に、中小企業や成長企業に限っては、経理担当者が複数業務を兼務するケースも珍しくありません。そのため、会計ソフトには単なる記帳機能だけでなく、日々の入力負荷を減らす操作性、周辺業務との連携、会計事務所とのやり取りのしやすさなど、複数のタスクをこなせる機能が求められます。

第2位:Gemini Workspace

ルーキー部門の第2位は、グーグル合同会社の「Gemini for Google Workspace」です。メインカテゴリーは文章生成AIで、レビュー数は48件、満足度は4.4、総合得点は499.18でした。

項目 内容
製品名 Gemini for Google Workspace
提供企業 グーグル合同会社
カテゴリー 文章生成AI
レビュー数 48
満足度 4.4
総合得点 499.18

「Gemini for Google Workspace」が評価された要因

Gemini for Google Workspaceは、Google Workspaceを利用する企業にとって、日常業務の延長で生成AIを活用しやすい点が注目されます。メール、文書作成、資料作成、表計算、情報整理など、すでに多くの従業員が使っている業務環境にAIを組み込めるため、利用開始のハードルを下げやすい製品です。

生成AI導入でよくある課題は、ツールが増えるほど従業員の学習負担が高まることです。既存の業務環境にAIが組み込まれていれば、利用者は新しい操作を覚える必要がなくなります。一方で、情報の取り扱いや利用ログの管理など、便利な機能を広く使えるからこそ、運用ルールの整備が重要になります。

第3位:LINE WORKS AiNote

ルーキー部門の第3位は、LINE WORKS株式会社の「LINE WORKS AiNote」です。メインカテゴリーはAI議事録自動作成ツールで、レビュー数は41件、満足度は4.1、総合得点は469.18でした。

項目 内容
製品名 LINE WORKS AiNote
提供企業 LINE WORKS株式会社
カテゴリー AI議事録自動作成ツール
レビュー数 41
満足度 4.1
総合得点 469.18

「LINE WORKS AiNote」が評価された要因

会議の多い企業では、議事録の作成や決定事項の整理、次回アクションの共有に多くの時間が使われます。LINE WORKS AiNoteでは、会議の音声を自動で文字起こしし、要点を整理し、必要な情報をチームで共有しやすくなることで、会議後作業の負荷を減らしながら、会議の価値を高めることができます。

AI議事録自動作成ツールを導入するときには、音声認識の精度だけでなく、話者分離、要約品質、共有範囲、保存期間、外部ツールとの連携機能の有無なども事前に確認しておきましょう。また、会議内容には顧客情報や人事情報が含まれることもあるため、情報管理ルールの整備も重要な要素になります。

第4位:JAPAN AI AGENT

ルーキー部門の第4位は、JAPAN AI 株式会社の「JAPAN AI AGENT」です。メインカテゴリーはAIエージェントツールで、レビュー数は33件、満足度は4.1、総合得点は466.42でした。

項目 内容
製品名 JAPAN AI AGENT
提供企業 JAPAN AI 株式会社
カテゴリー AIエージェントツール
レビュー数 33
満足度 4.1
総合得点 466.42

「JAPAN AI AGENT」が評価された要因

JAPAN AI AGENTは、社内のさまざまな業務に合わせてAIエージェントを構築し、業務効率とアウトプットの品質を高められる点が高く評価されています。議事録の作成や情報収集、資料作成など、日常的に発生する幅広いタスクをAIに任せることで、作業時間の短縮やリソースの圧縮につなげられます。

また、社内に蓄積されたデータや業務マニュアルなどを活用し、それぞれの企業に適したAIエージェントを運用できる点も特徴です。専門知識が必要な業務や複数の工程を含む作業にも活用できるため、個人の業務効率化だけでなく、組織全体の生産性向上を支援するツールとして支持を集めています。

第5位:AKARUMI

ルーキー部門の第5位は、株式会社ipeの「AKARUMI(アカルミ)」です。メインカテゴリーはAEO・GEO・LLMOツールで、レビュー数は9件、満足度は4.9、総合得点は457.21でした。

項目 内容
製品名 AKARUMI(アカルミ)
提供企業 株式会社ipe
カテゴリー AEO・GEO・LLMOツール
レビュー数 9
満足度 4.9
総合得点 457.21

「AKARUMI(アカルミ)」が評価された要因

AKARUMIは、今回のランキングの中でも特に新しい市場テーマを象徴する製品です。従来のSEO(検索エンジン対策)だけでなく、生成AIによる回答や要約の中で、自社のブランドや製品がどれくらい言及されているか、どのように扱われているかを可視化する、まさにAI時代ニーズに対応した製品といえます。

マーケティング担当者にとって、検索流入は長く重要なテーマでした。しかし、生成AIの普及により、ユーザーが検索結果一覧をクリックする前に、AIの回答から情報を得る場面が増えています。そうした流れにおいては、今後は従来のSEOよりも、新時代のAEO(生成AI最適化)がより重要になるでしょう。

第6位:ナレフルチャット

ルーキー部門の第6位は、CLINKS株式会社の「ナレフルチャット」です。メインカテゴリーは文章生成AIで、レビュー数は10件、満足度は4.3、総合得点は455.66でした。

項目 内容
製品名 ナレフルチャット
提供企業 CLINKS株式会社
カテゴリー 文章生成AI
レビュー数 10
満足度 4.3
総合得点 455.66

「ナレフルチャット」が評価された要因

ナレフルチャットは、文章生成AIの中でも、社内での使いやすさや業務活用を意識した製品として高い評価を集めています。生成AIツールは、メール文面の作成や議事録の要約など、多くの部門で利用できる一方で、セキュリティリスクや運用ルールの整備という観点では、一定のハードルを感じがちです。

特に、外資ベンダーが圧倒的多数を占める生成AIツールでは、国内ベンダーかつ安心感があるということは、JTC企業や個人情報の取り扱いに慎重な業界にとっては大きな利点です。ナレフルチャットのような製品は、生成AI利用を個人任せにせず、組織として活用するための有力な選択肢といえるでしょう。

第7位:Genspark

ルーキー部門の第7位は、MainFuncの「Genspark」です。メインカテゴリーはプレゼンテーションで、レビュー数は12件、満足度は4.2、総合得点は438.72でした。

項目 内容
製品名 Genspark
提供企業 MainFunc
カテゴリー プレゼンテーション
レビュー数 12
満足度 4.2
総合得点 438.72

「Genspark」が評価された要因

Gensparkは、情報収集や資料作成の効率化に関心を持つ企業にとって注目される製品です。プレゼンテーションやスライド資料の作成は、単にスライドの見た目を整える作業ではありません。テーマの整理から、情報収集や構成案の作成、要点の抽出や表現の調整など、実に多くの工程が含まれています。

AIを活用したプレゼンテーション資料の作成支援は、こうした工程の一部を大幅に短縮することができます。特に、営業資料、社内報告資料、企画書、調査レポートなど、短期間で一定品質のアウトプットが求められる業務では効果を発揮しやすく、誰でも簡単かつ直感的に利用できる点が大きな特徴です。

第8位:AI JIMY Converter

ルーキー部門の第8位は、シー・システム株式会社の「AI JIMY Converter」です。メインカテゴリーは文章生成AIで、レビュー数は18件、満足度は3.9、総合得点は435.07でした。

項目 内容
製品名 AI JIMY Converter
提供企業 シー・システム株式会社
カテゴリー 文章生成AI
レビュー数 18
満足度 3.9
総合得点 435.07

「AI JIMY Converter」が評価された要因

AI JIMY Converterは、文書やデータの変換作業を効率化したい企業に向いた製品です。企業内には、形式を変えるだけの作業や文面を整える作業、既存情報を別のフォーマットに合わせる作業が数多く存在しますが、こうした作業は単体では小さく見えても、積み重なると大きな負担になってしまいます。

たとえば、報告書の要約、問い合わせ文の整形、社内向け文書への変換、顧客向け文面への調整などは、担当者の時間を消費しやすい業務の代表的な例です。AI JIMY Converterのような製品を活用することで、定型的な変換作業に費やす時間を大幅に削減し、人が確認や判断に時間を使いやすくなります。

第9位:バクラク勤怠

ルーキー部門の第9位は、株式会社LayerXの「バクラク勤怠」です。メインカテゴリーは勤怠管理システムで、レビュー数は5件、満足度は4.3、総合得点は435.01でした。

項目 内容
製品名 バクラク勤怠
提供企業 株式会社LayerX
カテゴリー 勤怠管理システム
レビュー数 5
満足度 4.3
総合得点 435.01

「バクラク勤怠」が評価された要因

勤怠管理は、出退勤の記録や残業時間の確認、給与計算との連携など、企業にとって欠かせない業務です。バクラク勤怠は、バックオフィス業務を効率化する流れの中で注目されており、レビュー数は5件と少ないものの、満足度は4.3を獲得しており、初期利用者から一定の評価を得ていることが分かります。

特に、勤怠管理システムは関係する業務範囲が広く、運用が複雑になりやすい領域です。そのため、ツールの選定では、打刻方法、シフト管理、休暇管理、承認フロー、給与計算システムとの連携、法改正への対応を確認する必要があります。従業員が毎日利用する製品であるため、操作性も重要でしょう。

第10位:カミナシ設備保全

ルーキー部門の第10位は、株式会社カミナシの「カミナシ 設備保全」です。メインカテゴリーは設備保全管理システムで、レビュー数は8件、満足度は4.3、総合得点は434.30でした。

項目 内容
製品名 カミナシ 設備保全
提供企業 株式会社カミナシ
カテゴリー 設備保全管理システム
レビュー数 8
満足度 4.3
総合得点 434.30

「カミナシ 設備保全」が評価された要因

設備保全は、製造業や物流、店舗運営など、現場を持つ企業にとって重要な業務です。カミナシ 設備保全は、こうした現場業務をデジタル化し、保全情報を整理する製品です。紙の点検表や表計算ソフトで管理していた情報を一元化できれば、管理者だけでなく現場担当者にとっても確認しやすくなります。

設備の点検履歴、修理履歴、異常発生時の対応、予防保全の計画などを適切に管理できなければ、トラブル対応が属人的になりやすくなります。現場DXでは、管理部門が使いやすいだけでは不十分です。現場の担当者が迷わず入力できるか、モバイル端末で運用できるかなどを確認することが重要です。

まとめ

今回のRookie部門では、会計ソフト、生成AI、AI議事録、AIエージェント、AEO・GEO・LLMO、勤怠管理システム、設備保全システム、IP無線、サードパーティリスク管理、マニュアル作成ツールといった幅広いカテゴリーの製品がランクインしました。

これらの顔ぶれから分かるのは、新しいIT製品の価値が「目新しい技術」だけでは語れなくなっていることです。生成AIのような先端技術を活用した製品が目立つ一方で、会計や勤怠、設備保全といった日常業務に深く関わる製品も高く評価されています。

新しい製品は、導入に慎重さが必要です。しかし、適切に選び、小さく試し、効果を確認しながら広げていけば、業務変革の大きなきっかけになります。Rookie部門のランキングは、次のIT投資を考える企業にとって、いま注目すべき新興製品を知るための有力な手がかりになるでしょう。

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