ビジネスチャットとは

ビジネスチャットとは、ネットワークを介したリアルタイムコミュニケーションを実現するチャットツールのうち、ビジネス用途に特化したものを指す。組織のメンバーが離れた場所にいても、主に文字による情報のやり取りにより、円滑にコミュニケーションを取ることができ、複数名でのグループチャットも可能だ。

組織に合わせたグループの作成やファイルの共有、利用者の権限設定など、ビジネスでの利用を想定した機能を多く備えており、単純な連絡手段としてだけでなく、業務の効率化を図るために有効なツールとして多くの企業で利用されている。

ビジネスチャットとメールの比較

 組織の内外を問わず、コミュニケーションを取るためのツールとしては、以前からメールがよく利用されていたが、昨今ではプライベートでも知人との連絡にチャットツールを活用するケースが増えており、その手軽さからビジネスでも利用が増えている。

 ビジネスチャットの大きな特徴として、メールよりもリアルタイムなコミュニケーションに適していることが挙げられる。宛名やあいさつ文、署名など、定型化されたフォーマットやメールマナーに則して記載することが多いメールに比べて、ビジネスチャットでは簡潔な表現や絵文字、スタンプの利用などにより、対面での会話に近い、よりフランクで手軽なコミュニケーションを取ることができる点が特徴だ。最近ではチャットツールにビデオ通話や音声通話機能を備えるツールも増えてきており、より利便性が高くなってきている。

 また、スマートフォン用のアプリが提供されているツールも多く、PCだけでなくスマートフォンからでも手軽に連絡が取れることも特徴の1つだ。近年の若者には、家に固定電話がなく電話応対が苦手な人や、スマートフォンしか利用したことがなくPCが使えない人が増加しているといわれるが、そのような若い世代にとって取り組みやすいコミュニケーション手段であることもメリットの1つといえる。

 その一方で、メールに比べてすぐに返事をしなければいけない、といった感覚に陥りやすくなったり、多数のグループに属していて、他のメンバーによる大量のやり取りを確認するのに時間を要してしまったりと、迅速なコミュニケーションを取ることができるがゆえに生じるデメリットも存在する。また、メールと異なり、同じツールを利用しているメンバー間でないとコミュニケーションを取ることもできない。

ビジネスチャット メール
スピード ビジネスチャット手軽・迅速
一度やり取りした相手にはすぐメッセージを送れる
メール形式的で時間を要する
宛先メールアドレスの入力が必要
やり取りの後追い ビジネスチャット同じグループでのやり取りはひとつの場(スレッド)に残るのでスクロールして確認できる メール1通1通開いて確認する必要がある
資料の共有 ビジネスチャット手軽にファイルを送信できる
ストレージ機能を利用することでいつでも参照できる
メールメールに添付することができる
後で確認する場合、添付したメールを探さなくてはいけない
通話コミュニケーション ビジネスチャットリアルタイムにやり取りができる
音声通話・ビデオ通話のあるツールやプランもあり
メールリアルタイム性に乏しい
心理的距離 ビジネスチャットフランクなやり取りがしやすいため距離が近い メールチャットに比べてフォーマルなやり取りに向いている

導入事例と従業員数別の傾向

 以下は、代表的なビジネスチャットのレビューから、どの企業の社員がどのツールを利用しているかを列挙したもの。また、グラフはレビューした人の企業の従業員規模別の割合を示している。

導入事例と従業員数別の傾向
2020年5月時点のデータを基に算出

ビジネスチャットの活用シーン

活用シーン1:メールより迅速に社内外のコミュニケーションを円滑化できる

 ビジネスチャットがもたらす効果の1つは、今までメールや対面で行っていたやり取りの円滑化だ。日常の連絡手段を、メールからビジネスチャットに置き換えることで、社内外問わず、より手軽で迅速なコミュニケーションが生まれる。

ビジネスチャットの活用シーン

活用シーン2:プロジェクトごとのグループにより、質の高い、スピード感のある仕事ができる

 プロジェクトごとにグループをつくり、グループ内でのチャットの他、議事録や資料、プロジェクトのスケジュールなどを共有することができる。定期的な会議の場以外で、コミュニケーションを取る機会が増えることから、仕事を質も高められる。またグループ内の特定のメンバーを指定して会話を投げかける機能(メンション機能、to機能)を使うことで、誰に向けて答えを求めているのかが明確になり、メールでは難しい、スピード感のある仕事を実現することができる。

プロジェクトごとのグループにより、質の高い、スピード感のある仕事ができる

活用シーン3:音声やビデオ通話により、場所にとらわれないシームレスなやり取りが可能となる

 ビジネスチャットがあれば、文字のやり取りに加え、音声通話やビデオ通話が可能だ。お互いの顔を見て話せることはもちろん、画面を共有することで、全員で同じ資料を見ながら意見交換できるため、リモートワークの社員や遠方の顧客とも、距離を感じさせないコミュニケーションを実現できる。

▼ビデオ通話の様子
ビデオ通話の様子:Slack
Slackの使い方より

ビデオ通話の様子:Chatwork
Chatwork公式サイトより

ビジネスチャットの選定ポイント

ビジネスチャットの機能

 ビジネスチャットとひと言で言っても、その機能は製品によって多種多彩だ。チャット機能に特化した製品もあるが、業務改善のためのツールの1つの機能としてチャット機能を有している製品もある。

1. コミュニケーション

機能 解説
チャット 1対1もしくはグループ内において、リアルタイムでテキストをやりとりできる。また、グループチャット中に特に読んでほしい相手をメンションで指名しつつ、グループ全体へメッセージを送信する
他ユーザーのプロフィール確認 組織内の他ユーザーのプロフィールを参照できる
既読/未読のステータス表示 メッセージが読まれたかどうかのステータスを表示する
メッセージ受信の通知 画面表示/通知音、あるいは電子メールへの送信などでメッセージの受信を知らせる
プレゼンス 個々のユーザーのプレゼンス(在席状況)を確認できる
ファイル共有 画像、動画などのファイルをアップロード/ダウンロードできる
タイムライン 参加している全グループへの投稿をまとめて、時系列などの形式で表示できる
メッセージの検索 過去にやりとりしたメッセージに対して、キーワード、ユーザー、タグなどを用いて検索を行える
スタンプ 用意されたイラストなどを用いて、文字入力を省略したり、微妙なニュアンスを伝えたりできる
タスク管理 自分が行うべきタスクや相手に依頼したいタスクを管理し、優先度や部門別などで確認できる
社外ユーザーの招待 社外ユーザーのメールアドレスを使い、組織内のチャットルームに招待する

2. アクセス制御

機能 解説
ユーザー管理 管理者が組織内ユーザーの追加・変更を行ったり、利用状況や操作履歴などを確認したりできる
セキュリティ管理 利用デバイスやIPアドレスなどによるアクセス制限、部署単位やユーザー単位で利用可能な機能を制限できる
二要素認証 IDとパスワードに加え、登録された電話番号へ確認コードを送り、そのコード入力による二段階の認証を設けることで成りすましの登録を防ぐ
リモートワイプ デバイスの紛失や盗難の際リモートからチャットルームやデータを削除する

自社に合った製品の選び方

自社に合った製品の選び方
 ビジネスチャットは、製品によって利用できる機能・特徴が大きく異なるため、ビジネスチャットの導入を検討する場合は、自社が必要としている機能や特徴をその製品が有しているかどうか、事前に十分確認する必要がある。導入に当たりチェックしておきたいポイントは以下の通りだ。

操作性

 機能が豊富でも、自社のメンバーが使いこなせなくては意味がないため、ツールの操作性は非常に重要だ。例えば、LINE WORKSは、日本で広く普及するコミュニケーションツールであるLINEと操作性が近く、LINEを使用していれば使い始めることは難しくないだろう。一方、Slackは、機能が豊富なだけでなく、多くの外部ツールと連携できたり、プログラムのソースコードを見やすい形で送れたりするなど、ITリテラシーの高い層に人気がある。

導入済みの製品との連携

 既に自社で導入している製品もビジネスチャットを導入する上で重要になる場合がある。例えば、Slackは連携可能な外部アプリケーションの数が非常に豊富だ。既に自社で利用している製品をSlackと連携させることで、さまざまな通知をSlackで管理したり、Googleドライブなどのクラウドストレージ上のファイルを、Slackから直接扱うことができる。

 また、自社でMicrosoft 365(旧Office 365)を導入している場合には、Microsoft Teamsが有力な候補になるだろう。Microsoft TeamsはMicrosoft 365の主要なプランに含まれているため、追加コストが発生することなく利用できる。製品としても完成度が高く、ビデオ会議のツールとしても利用者が増えている。

セキュリティ

 ビジネスで使う場合、セキュリティも外すことのできないポイントだ。例えば、グループチャットに社外メンバーにも参加してもらう場合、権限設定には十分配慮する必要があり、柔軟な権限設定ができることが求められる。主要なビジネスチャットの製品は、どれもセキュリティに関する機能が充実しているが、プランによって管理できる内容が異なることもあるため、自社の状況に合わせてトライアル期間に確認することが重要だ。

代表的なツールの比較

 当サイトでもレビューの多い、代表的なビジネスチャットツールの特徴を紹介する。

Chatwork

 Chatwork(チャットワーク)は、導入企業が26万社を超える国産ビジネスチャットツールだ。Slackと近い時期にサービス提供が開始されたことから、国内ではSlackとよく比較されてきた。チャット機能以外にも、Slackにはないタスク管理やファイル管理、音声通話・ビデオ通話機能があり、分かりやすいインターフェースに収められている。外部のメンバーを招待して共同で作業することも想定されており、外部のメンバーとタスクを共有することができる。無料版では作成できるグループ数に制限がある他、複数名での音声通話・ビデオ通話などが利用できない。

LINE WORKS

 LINE WORKS(ラインワークス)は、日本で広く普及しているLINEのビジネス版と言えるコミュニケーションツールだ。音声通話・ビデオ通話、ファイル共有、スケジュール管理機能など、他のツールと比較しても機能面で目立った不足はない。LINEでお馴染みのスタンプも使え、LINE利用者ともトークすることができる。また、LINEの特徴的な機能である既読確認も使うことができる。無料版では、細かいアクセス制限などの権限管理や多くのセキュリティ関連の機能、複数名での音声通話・ビデオ通話が利用できないが、有料版は比較的安価に利用可能だ。

Microsoft Teams

 Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)は、Microsoft 365に含まれるアプリケーションの1つで、発表が2017年と他のツールに比べて後発の製品だ。ただ、Microsoftは特に力を入れて開発しており、2019年には利用者が2,000万人を突破し話題になった。

 Outlookなど他のOffice製品との連携や、音声通話・ビデオ通話も備えた多機能コミュニケーションツールで、既にMicrosoft 365を利用している企業では追加コストが発生しない。外部連携やストレージ容量に制限はあるものの、無料版でも主要な機能を利用できる点も魅力だ。

Slack

 Slack(スラック)は、2013年に誕生したコミュニケーションツールで、今では世界中で利用されている。豊富な機能、多彩な外部アプリケーション連携、柔軟なカスタマイズ性が特徴で、特にIT業界やエンジニアの利用者が多い傾向がある。基本的な機能は無料で利用できるが、検索可能なメッセージが10,000件までとなっており、それ以上になると過去のメッセージを確認できない。また、無料版では、複数名で音声通話・ビデオ通話を利用することはできない。

Slack、Microsoft Teams、Chatwork、LINE WORKSの比較はこちらから

ビジネスチャットに関して、更なる詳細はこちらから

ビジネスチャットの基礎知識

ビジネスチャットとは、ネットワークを介したリアルタイムコミュニケーションを実現するチャットツールのうち、ビジネス用途に特化したものを指す。組織のメンバーが離れた場所にいても、主に文字による情報のやり取りにより、円滑にコミュニケーションを取ることができ、複数名でのグループチャットも可能だ。

組織に合わせたグループの作成やファイルの共有、利用者の権限設定など、ビジネスでの利用を想定した機能を多く備えており、単純な連絡手段としてだけでなく、業務の効率化を図るために有効なツールとして多くの企業で利用されている。

ビジネスチャットとメールの比較

 組織の内外を問わず、コミュニケーションを取るためのツールとしては、以前からメールがよく利用されていたが、昨今ではプライベートでも知人との連絡にチャットツールを活用するケースが増えており、その手軽さからビジネスでも利用が増えている。

 ビジネスチャットの大きな特徴として、メールよりもリアルタイムなコミュニケーションに適していることが挙げられる。宛名やあいさつ文、署名など、定型化されたフォーマットやメールマナーに則して記載することが多いメールに比べて、ビジネスチャットでは簡潔な表現や絵文字、スタンプの利用などにより、対面での会話に近い、よりフランクで手軽なコミュニケーションを取ることができる点が特徴だ。最近ではチャットツールにビデオ通話や音声通話機能を備えるツールも増えてきており、より利便性が高くなってきている。

 また、スマートフォン用のアプリが提供されているツールも多く、PCだけでなくスマートフォンからでも手軽に連絡が取れることも特徴の1つだ。近年の若者には、家に固定電話がなく電話応対が苦手な人や、スマートフォンしか利用したことがなくPCが使えない人が増加しているといわれるが、そのような若い世代にとって取り組みやすいコミュニケーション手段であることもメリットの1つといえる。

 その一方で、メールに比べてすぐに返事をしなければいけない、といった感覚に陥りやすくなったり、多数のグループに属していて、他のメンバーによる大量のやり取りを確認するのに時間を要してしまったりと、迅速なコミュニケーションを取ることができるがゆえに生じるデメリットも存在する。また、メールと異なり、同じツールを利用しているメンバー間でないとコミュニケーションを取ることもできない。

ビジネスチャット メール
スピード ビジネスチャット手軽・迅速
一度やり取りした相手にはすぐメッセージを送れる
メール形式的で時間を要する
宛先メールアドレスの入力が必要
やり取りの後追い ビジネスチャット同じグループでのやり取りはひとつの場(スレッド)に残るのでスクロールして確認できる メール1通1通開いて確認する必要がある
資料の共有 ビジネスチャット手軽にファイルを送信できる
ストレージ機能を利用することでいつでも参照できる
メールメールに添付することができる
後で確認する場合、添付したメールを探さなくてはいけない
通話コミュニケーション ビジネスチャットリアルタイムにやり取りができる
音声通話・ビデオ通話のあるツールやプランもあり
メールリアルタイム性に乏しい
心理的距離 ビジネスチャットフランクなやり取りがしやすいため距離が近い メールチャットに比べてフォーマルなやり取りに向いている

導入事例と従業員数別の傾向

 以下は、代表的なビジネスチャットのレビューから、どの企業の社員がどのツールを利用しているかを列挙したもの。また、グラフはレビューした人の企業の従業員規模別の割合を示している。

導入事例と従業員数別の傾向
2020年5月時点のデータを基に算出

ビジネスチャットの活用シーン

活用シーン1:メールより迅速に社内外のコミュニケーションを円滑化できる

 ビジネスチャットがもたらす効果の1つは、今までメールや対面で行っていたやり取りの円滑化だ。日常の連絡手段を、メールからビジネスチャットに置き換えることで、社内外問わず、より手軽で迅速なコミュニケーションが生まれる。

ビジネスチャットの活用シーン

活用シーン2:プロジェクトごとのグループにより、質の高い、スピード感のある仕事ができる

 プロジェクトごとにグループをつくり、グループ内でのチャットの他、議事録や資料、プロジェクトのスケジュールなどを共有することができる。定期的な会議の場以外で、コミュニケーションを取る機会が増えることから、仕事を質も高められる。またグループ内の特定のメンバーを指定して会話を投げかける機能(メンション機能、to機能)を使うことで、誰に向けて答えを求めているのかが明確になり、メールでは難しい、スピード感のある仕事を実現することができる。

プロジェクトごとのグループにより、質の高い、スピード感のある仕事ができる

活用シーン3:音声やビデオ通話により、場所にとらわれないシームレスなやり取りが可能となる

 ビジネスチャットがあれば、文字のやり取りに加え、音声通話やビデオ通話が可能だ。お互いの顔を見て話せることはもちろん、画面を共有することで、全員で同じ資料を見ながら意見交換できるため、リモートワークの社員や遠方の顧客とも、距離を感じさせないコミュニケーションを実現できる。

▼ビデオ通話の様子
ビデオ通話の様子:Slack
Slackの使い方より

ビデオ通話の様子:Chatwork
Chatwork公式サイトより

ビジネスチャットの選定ポイント

ビジネスチャットの機能

 ビジネスチャットとひと言で言っても、その機能は製品によって多種多彩だ。チャット機能に特化した製品もあるが、業務改善のためのツールの1つの機能としてチャット機能を有している製品もある。

1. コミュニケーション

機能 解説
チャット 1対1もしくはグループ内において、リアルタイムでテキストをやりとりできる。また、グループチャット中に特に読んでほしい相手をメンションで指名しつつ、グループ全体へメッセージを送信する
他ユーザーのプロフィール確認 組織内の他ユーザーのプロフィールを参照できる
既読/未読のステータス表示 メッセージが読まれたかどうかのステータスを表示する
メッセージ受信の通知 画面表示/通知音、あるいは電子メールへの送信などでメッセージの受信を知らせる
プレゼンス 個々のユーザーのプレゼンス(在席状況)を確認できる
ファイル共有 画像、動画などのファイルをアップロード/ダウンロードできる
タイムライン 参加している全グループへの投稿をまとめて、時系列などの形式で表示できる
メッセージの検索 過去にやりとりしたメッセージに対して、キーワード、ユーザー、タグなどを用いて検索を行える
スタンプ 用意されたイラストなどを用いて、文字入力を省略したり、微妙なニュアンスを伝えたりできる
タスク管理 自分が行うべきタスクや相手に依頼したいタスクを管理し、優先度や部門別などで確認できる
社外ユーザーの招待 社外ユーザーのメールアドレスを使い、組織内のチャットルームに招待する

2. アクセス制御

機能 解説
ユーザー管理 管理者が組織内ユーザーの追加・変更を行ったり、利用状況や操作履歴などを確認したりできる
セキュリティ管理 利用デバイスやIPアドレスなどによるアクセス制限、部署単位やユーザー単位で利用可能な機能を制限できる
二要素認証 IDとパスワードに加え、登録された電話番号へ確認コードを送り、そのコード入力による二段階の認証を設けることで成りすましの登録を防ぐ
リモートワイプ デバイスの紛失や盗難の際リモートからチャットルームやデータを削除する

自社に合った製品の選び方

自社に合った製品の選び方
 ビジネスチャットは、製品によって利用できる機能・特徴が大きく異なるため、ビジネスチャットの導入を検討する場合は、自社が必要としている機能や特徴をその製品が有しているかどうか、事前に十分確認する必要がある。導入に当たりチェックしておきたいポイントは以下の通りだ。

操作性

 機能が豊富でも、自社のメンバーが使いこなせなくては意味がないため、ツールの操作性は非常に重要だ。例えば、LINE WORKSは、日本で広く普及するコミュニケーションツールであるLINEと操作性が近く、LINEを使用していれば使い始めることは難しくないだろう。一方、Slackは、機能が豊富なだけでなく、多くの外部ツールと連携できたり、プログラムのソースコードを見やすい形で送れたりするなど、ITリテラシーの高い層に人気がある。

導入済みの製品との連携

 既に自社で導入している製品もビジネスチャットを導入する上で重要になる場合がある。例えば、Slackは連携可能な外部アプリケーションの数が非常に豊富だ。既に自社で利用している製品をSlackと連携させることで、さまざまな通知をSlackで管理したり、Googleドライブなどのクラウドストレージ上のファイルを、Slackから直接扱うことができる。

 また、自社でMicrosoft 365(旧Office 365)を導入している場合には、Microsoft Teamsが有力な候補になるだろう。Microsoft TeamsはMicrosoft 365の主要なプランに含まれているため、追加コストが発生することなく利用できる。製品としても完成度が高く、ビデオ会議のツールとしても利用者が増えている。

セキュリティ

 ビジネスで使う場合、セキュリティも外すことのできないポイントだ。例えば、グループチャットに社外メンバーにも参加してもらう場合、権限設定には十分配慮する必要があり、柔軟な権限設定ができることが求められる。主要なビジネスチャットの製品は、どれもセキュリティに関する機能が充実しているが、プランによって管理できる内容が異なることもあるため、自社の状況に合わせてトライアル期間に確認することが重要だ。

代表的なツールの比較

 当サイトでもレビューの多い、代表的なビジネスチャットツールの特徴を紹介する。

Chatwork

 Chatwork(チャットワーク)は、導入企業が26万社を超える国産ビジネスチャットツールだ。Slackと近い時期にサービス提供が開始されたことから、国内ではSlackとよく比較されてきた。チャット機能以外にも、Slackにはないタスク管理やファイル管理、音声通話・ビデオ通話機能があり、分かりやすいインターフェースに収められている。外部のメンバーを招待して共同で作業することも想定されており、外部のメンバーとタスクを共有することができる。無料版では作成できるグループ数に制限がある他、複数名での音声通話・ビデオ通話などが利用できない。

LINE WORKS

 LINE WORKS(ラインワークス)は、日本で広く普及しているLINEのビジネス版と言えるコミュニケーションツールだ。音声通話・ビデオ通話、ファイル共有、スケジュール管理機能など、他のツールと比較しても機能面で目立った不足はない。LINEでお馴染みのスタンプも使え、LINE利用者ともトークすることができる。また、LINEの特徴的な機能である既読確認も使うことができる。無料版では、細かいアクセス制限などの権限管理や多くのセキュリティ関連の機能、複数名での音声通話・ビデオ通話が利用できないが、有料版は比較的安価に利用可能だ。

Microsoft Teams

 Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)は、Microsoft 365に含まれるアプリケーションの1つで、発表が2017年と他のツールに比べて後発の製品だ。ただ、Microsoftは特に力を入れて開発しており、2019年には利用者が2,000万人を突破し話題になった。

 Outlookなど他のOffice製品との連携や、音声通話・ビデオ通話も備えた多機能コミュニケーションツールで、既にMicrosoft 365を利用している企業では追加コストが発生しない。外部連携やストレージ容量に制限はあるものの、無料版でも主要な機能を利用できる点も魅力だ。

Slack

 Slack(スラック)は、2013年に誕生したコミュニケーションツールで、今では世界中で利用されている。豊富な機能、多彩な外部アプリケーション連携、柔軟なカスタマイズ性が特徴で、特にIT業界やエンジニアの利用者が多い傾向がある。基本的な機能は無料で利用できるが、検索可能なメッセージが10,000件までとなっており、それ以上になると過去のメッセージを確認できない。また、無料版では、複数名で音声通話・ビデオ通話を利用することはできない。

Slack、Microsoft Teams、Chatwork、LINE WORKSの比較はこちらから

ビジネスチャットに関して、更なる詳細はこちらから

ビジネスチャット導入時のROI・費用対効果の算出方法

1.ビジネスチャット導入でメール利用コスト課題解決を重視する場合

一般的には、全ての連絡がチャットに移行できるわけではないため、メール総量に対し、どの程度がチャットに移行できるかの判断が必要になってくる。これを踏まえ、費用対効果は下記の計算式で算出する。

費用対効果


(A)メール送信に要している人件費 = 

利用人数 × 送信通数 × 送信1回あたり作業時間 × 1分あたり人件費

●計算の例
 ・利用人数:200人
 ・送信通数:1日あたり平均12通、年間(260日)で2860通 *
 ・送信1回あたり作業時間:6分 *
 ・1分あたり人件費:時間あたり4000円として約66円
  200 [人] × 6 [分] × 12 [通] × 66 [円] × 260 (日)= 247,104,000 [円]

※1日平均メール通数、作業時間は「ビジネスメール実態調査2018」(一般社団法人日本ビジネスメール協会)を参照

(B)ビジネスチャット導入後のチャット送信に要する人件費 = 

チャット送信1回あたり人件費 × チャット送信件数 

 ・チャット送信1回あたり人件費
  チャット送信に要する時間:0.5分
   200 [人] × 0.5 [分] × 11 [回] × 66 [円] × 260 (日) = 18,876,000 [円]

 ・チャット送信件数:メール送信の3割が代替できるとして1日あたり3.6回、
           メールよりもやりとりの回数が増加する傾向を考慮してその約3倍で11回とする

(C) ビジネスチャット導入後にも残るメール送信に要する人件費 = 

導入前のメール送信人件費 × チャットで代替できない送信の割合(%) 

 ・チャットで代替できない送信の割合:70% (メール送信通数の30%がチャット代替可能として、70%)
247,104,000 [円] × 0.7 = 172,972,800 [円]


(D)ビジネスチャット利用料(初期費用なしの場合) = 

利用人数 × 月額料金 × 12 (カ月) 

■注意ポイント:導入企業ではメールシステムを廃止した企業がある一方、10%ほどしかチャットに切り替えられていない企業もある。業務内容や社内文化によって活用頻度は異なるため、一定期間ビジネスチャットを試用して、適切に効果を算出した方が望ましい

2.社内会議のチャット代替、および会議用資料の事前共有を行う場合

ビジネスチャットのグループ内では常に情報共有と議論が可能だ。定例会議など会議の一部をチャットで代替したり、事前に会議用資料をファイル共有して会議時間を短縮するといった効果も算出可能だ。

会議の削減における費用対効果

(A)会議の全体コスト

 会議時間 × 出席者の時間あたり人件費 + 移動費と移動中の人件費 + 会議用資料作成・配布費

(B)チャットとファイル共有機能により削減できる会議コスト

 上記(A)の計算式から、従来は必要だった下記がゼロとなる
 ・移動交通費と移動中の人件費

 加えて、全てゼロになるわけではないが、下記の項目も削減が見込める
 ・会議時間(チャット上で議論や状況共有ができることにより会議数・時間自体の削減効果が見込める)
 ・会議用資料配布費(人件費や紙コスト)

ROI・費用対効果を算出する際には、ぜひこれらのケースを参考にしていただきたい。

また、ITreviewでは稟議起案時にROI・費用対効果の算出など参考情報としてそのまま添付できるサポートコンテンツを無料配布中だ。下記にてダウンロード後、稟議の起案にお役立ていただきたい。