【2023年】MA(マーケティングオートメーション)のおすすめ10製品(全41製品)を徹底比較!満足度や機能での絞り込みも
MA(マーケティングオートメーション)とは
マーケティングオートメーションとは、営業などの現場においてリード顧客から成約までのマーケティング業務を自動化し、マーケティング活動そのものを効率化するツールを指す。Marketing Automationの頭文字をとって、通称MAと呼ばれる。
関連記事:MAとは?マーケティングオートメーションの機能・メリット・選び方
豊富なリード(見込み客)情報の中から確度の高い有望な見込み客を抽出、分析し、既存顧客に対し定期的に情報提供を行い、エンゲージメントを高めるなどの効果が期待できる。従来は顧客一人ひとりに応じた大規模な作業が手動で行われ膨大な時間と手間を要したが、そうしたマーケティング業務を自動化し、マーケターの業務効率を高めることができる。
また、営業部門が管理する顧客情報にシームレスに連携することで、営業部門は確度の高い見込み客や付加情報をもって営業活動が行えるため、全社として効率の高い営業活動が実現できる。
マーケティングオートメーションの定義
・メール、ソーシャルメディア、SMS、デジタル広告配信のうちいずれかを自動化できる
・メールにおいて、HTMLメールの作成やABテスト、スケジューリング、セグメンテーションができる
・ランディングページや申し込みフォームを生成できる
・見込み客の属性情報やオンライン行動履歴ごとに見込み確度のスコアを付け、スコアの合計値から有望性の高い見込み客を絞り込める
・特定の行動やトリガー、または期間の経過後に、自動的にターゲットにメール配信できる
・キャンペーンの結果をダッシュボード(レポート)で確認でき、ROIなどの詳細を分析できる
導入を検討したいユーザー層
・自社のマーケティング活動の業務効率、リードの案件化・商談化率に課題を持つマーケティング部門
・自社の事業拡大に取り組む営業・マーケティング担当
・リードの獲得、育成、管理業務を担当するマーケティング部門の担当者
・マーケティング部門からの情報に基づいてリードへ営業活動を行う営業部門の担当者
MAツールの利用用途
MAツールには対象となる顧客にあわせ、BtoB向け製品とBtoC向け製品がある。
ITreviewではそれぞれの利用用途で、カテゴリーグリッド、製品一覧をフィルタリング可能となっている。
MAは2000年代にアメリカで普及し始めた機能であるが、日本での導入が盛んに行われるようになったのは2014年頃からである。入力作業やメール送信などのルーティンワークを自動化できるとともに、マーケティング施策をツール上に統合できるため、利益向上や収益分析などに役立てられている。
現在ではMA市場が急速な成長を遂げており、多くの営業活動の現場で役立てられるほか、営業の効率化だけでなく顧客の購買意欲向上につながっている。One to Oneマーケティングも実現できることから、今後さらに普及が拡大していくだろう。
マーケティングオートメーションの必要性とは?MAの機能やできること
インターネットの普及拡大により情報収集が容易となった現代において、MAは顧客に効率的かつ確実なアプローチができ、"One to Oneマーケティング”の実現に不可欠といえる。
物事の情報収集に、さまざまな情報が行き交うインターネットの活用が基本となっていることからも、より顧客のニーズに絞った的確なアプローチが求められる。小規模であれば人手によりカバーできるものでも、数万人を超える顧客を抱える企業において、営業活動における業務効率化は大きな課題だろう。
MAの活用により、膨大なコストや時間を無駄にすることなく顧客の情報を一元管理できる。顧客の行動を踏まえたさまざまな施策を設定できるため、競合他社への流出を防止し、リピートを促すなど、顧客ロイヤリティーの構築にも効果的といえるだろう。
また、企業運営においてマーケティング効果を見える化できることも大きな利点となる。収益アップにつながるパターンを学習できるため、新しい施策の立案や、早期段階でボトルネックを発見できる。
関連記事:MAが営業のムダを解決!マーケティングオートメーションが質の高い営業を創出する理由
ここでは、MAの主な機能を紹介する。
見込み客(リード)管理
機能 |
解説 |
---|---|
見込み客(リード)情報管理 | 見込み客の企業名、所在地、電話番号などの企業情報、担当者の名刺情報、個人の場合は年齢、性別などの属性など、顧客に関する情報をデータベースに保管する |
Cookie情報とのひも付け | Cookieを埋め込み、オンラインの行動履歴によって最適なコンテンツを出し分けしたり、メールアドレスなどの情報を未取得であっても適切なキャンペーン案内を行ったりできる |
オフライン行動履歴管理 | 展示会や自社セミナーなどオフラインで獲得した名刺情報を見込み客情報として取り込み、蓄積できる。訪問履歴の有無によってそれぞれ最適なマーケティング施策を実施できる |
CRM/SFA連携 | マーケティングの施策状況やMAで獲得した顧客情報を営業部門が管理するCRMやSFAに反映し、との情報連携を実現する |
コンテンツの作成
機能 |
解説 |
---|---|
ランディングページ作成 | 検索エンジンの検索結果、または広告ページのリンクなどをクリックした見込み客が最初に目にするランディングページのコンテンツ制作を行う |
フォーム作成 | セミナーやイベントへの参加申し込み登録、見込み客に対するアンケートの実施など、リードの獲得を目的とした各種フォームを作成する |
SNS連携 | Twitter、FacebookなどのSNSを利用した情報発信およびSNS上で交わされた自社製品・サービス、他社製品との比較などに関するレビュー情報を収集し、運用管理する |
オウンドメディア、ブログ作成 | 自社製品、サービスと関連情報、事例などを発信する自社独自メディアを構築・配信する |
キャンペーン設計とスコアリング
機能 |
解説 |
---|---|
ターゲティング、キャンペーン管理 | 見込み客の中から自社製品、サービスのターゲットとなる客を絞り込み、キャンペーンの設計から実行、効果測定までを一元的に管理する |
スコアリング設定 | 見込み客の属性情報(企業規模、業界など)やオンライン行動履歴などの情報ごとに、見込み確度のスコアを付け、スコアの合計値からより有望性の高い見込み客を絞り込める |
シナリオ作成 | オンライン行動にトリガーを設定し、見込み客がそれを実行した場合にメール送信やポップアップによるキャンペーン提示、申し込みフォーム表示など次のアクションを自動実行するといったシナリオを作成できる |
メール作成・配信 | 作成したシナリオに基づいて、メールマガジンやキャンペーンメールの作成・配信を自動的に実行する |
ステップメール | 初回購入などのユーザーのアクションを起点に、1週間後、3カ月後など設定期間ごとにあらかじめ作成したメールを個別配信する |
ダッシュボード | ECサイトやキャンペーンサイトを含むWebサイトへの流入状況、メールマガジンやキャンペーンメールの配信結果、資料請求、問い合わせの状況といったマーケティング活動の各種プロセスを効果測定しダッシュボードにまとめる |
関連記事:マーケティング効率化に欠かせない!MA導入に欠かせない3つの機能とは
MA・SFA・CRMの違いとは?
企業のマーケティングや営業活動を効率化するためには、それらを支援するツールの活用が欠かせない。
その一つがマーケティング活動を自動化する「マーケティングオートメーション」だが、「SFA(セールスフォースオートメーション)」、「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」などと混在されることも多い。
それぞれの定義や機能の違いは以下のとおりだ。
名称 |
役割 |
主な機能 |
---|---|---|
MA(マーケティングオートメーション) | マーケティング活動の自動化・効率化 | 見込み客の獲得、育成など |
SFA(セールスフォースオートメーション) | 営業活動の効率化 | 商談・案件管理、営業活動の分析や受注予測など |
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント) | 顧客満足度やロイヤルティの向上 | 新規・既存顧客のキャンペーン管理、顧客とのコミュニケーション管理など |
高確度のリードを営業部門にリアルタイムに共有すれば、確度の高いリードからアプローチできるなど効率的な営業活動が実現できる。その他にも、例えば、MAツールで分析・抽出したリードに対する案件化の状況や商談の結果を、CRMやSFAから直接フィードバックして情報管理することで、MAでのスコアリングのロジックやポイントを変更するなど、より確度の高いリードの分析に役立てることができる。
また、営業担当者が既存顧客との商談の中でヒアリングしたBANT情報(Budget=予算、Authority=決裁権、Needs=必要性、Timeframe=時期)をMAとCRM、SFAの間で共有することで、適切なタイミングでキャンペーン施策を打ったり、商談につながりやすいコンテンツ作成などに活用したりできる。
既にCRMやSFAを導入済みの企業であるならば、連携しない選択はないだろう。それぞれの機能の違いは、下記でも詳しく解説している。
関連記事:MA・SFA・CRMの違いとは?定義や導入目的を分かりやすく解説
MAツールのシナリオ設計方法
見込み顧客の適切なナーチャリング(育成)に活用したいのが、MAツールのシナリオ設計だ。シナリオとは、直訳すると「脚本」を意味し、マーケティングオートメーションにおいては見込み顧客に対して、適切なタイミングでアプローチするための設計にあたる。
たとえば、「配信しているメルマガを開封したユーザーに対して、ホワイトペーパーやebookを送る」「商品を購入したユーザーに、関連商品の案内を送る」など、特定の行動を起こしたユーザーに対して、次のアクションを起こしてもらうための設計といえる。
この章では、シナリオ設計の方法について解説する。
STEP1:ターゲットを決める
まずは誰にアプローチすべきか、つまりターゲットの選定から始める。ターゲットの選定軸として用いられるのは、以下の3つの方法だ。
・ライフサイクル軸:「見込み客」「新規顧客」「休眠顧客」など企業と顧客の関係性を軸にターゲットを分類
・顧客行動軸:「メールの開封」「セミナーに参加」「商品を購入」など顧客の行動を軸にターゲットを分類
・顧客属性軸:年齢や性別、職業・役職や年収といった顧客の属性を軸にターゲットを分類
STEP2:アプローチするタイミングを決める
ターゲットに対して適切なタイミングでアプローチすることで、効果的に次のアクションへと繋げることができる。メルマガであれば「何時に送るべきか」「顧客がどの行動をとった後になにを送るべきか」「どれくらいの頻度で送るべきか」といった視点で考えるのが大切だ。
STEP3:提供するコンテンツを決める
ターゲットによって、提供するコンテンツの内容は異なる。
たとえば、かつては継続的にサービスや製品を利用していたものの直近でアクションを起こしていないユーザーに対しては、割引クーポンを配布するなど再びアクションを起こしてもらうためのトリガーとなるコンテンツが必要だ。
匿名のユーザーに対しては、ホワイトペーパーやebookなどを配布し、個人情報を入力してもらうことで実名ユーザーへと転換できる。
STEP4:チャネルを決める
コンテンツを届けるためのチャネルを設定する。
MAツールというとメール配信が一般的だが、必ずしもメール配信だけでなく「Webサイト」や「電話」「セミナー」など一つの手法に頼らず、さまざまなチャネルを組み合わせることで、効果的なアプローチを実現する。
マーケティングオートメーションの導入効果
1. マーケティング活動・施策に関する業務の効率化
リード獲得施策の作成・実施、リードのスコアリング、リードナーチャリング、Webコンテンツやメールの作成・配信、効果測定など、マーケティング担当者は常に多くのタスクを抱えている。すべてを手作業で行うと、膨大な時間と作業負荷がかかるだろう。MAを導入すれば、そうした負荷の高い各種業務プロセスを自動化し、作業にかかる時間と人件費を含むコストを大幅に削減できる。
細かな作業でも自動化は可能だ。自社のWebサイトの閲覧履歴やセミナー参加などのリードをデータ化することで、潜在的ニーズのある見込み客に絞ったメール送信などの細かなフォローができる。顧客の年齢や性別のみならず、購入履歴や閲覧ページなどから細かなセグメントに分類できるため、メール以外の広告配信、LINE配信などの適切なコンテンツ配信を実現できる。
また、申し込みフォームの作成やリストアップ、セミナー後のフォローなどのさまざまな作業にも役立てられるため、マーケターは価値創造などといった人手ならではの作業に目を向けられる。
2. マーケティング活動・施策内容の可視化
マーケティング活動・施策のための各種業務プロセスは、マーケティング担当者の経験や知識に基づく属人的な方法で行われてきた。MAを導入して活動・施策内容を可視化すれば、そうした属人性は排除される。マーケティング経験が浅い担当者でも業務を実践できるだろう。
リスティング広告などのWebマーケティングにおいては、KPIの設定により流入元やコンバージョンに至った顧客の割合などを把握することは重要だ。同時に、MAによって直接収益に影響している施策を把握できるという利点がある。MAの導入により施策や効果を可視化することで、不要な広告費や制作費などを削減し、コストを最適化できるだろう。
3. 営業部門との情報連携による業績アップ
マーケティング部門と営業部門の情報連携ができていないために、リードに対する営業活動が不十分で業績に結び付かないことがある。MAを導入して高確度のリード情報などを営業部門へリアルタイムに共有すれば、顧客に効果的な営業ができ、業績向上につなげられる。
また、獲得した顧客のデータはMA上で管理できるため、組織全体で情報共有が可能となる。従来では、営業担当者が商談などで交換した名刺は個人で保有し、その情報を用いてアプローチするという手法が一般的だった。獲得できる案件のタイミングを逃していることや、見込み客に十分なアプローチができていない案件もあっただろう。MAの導入により顧客情報が全て営業活動の資産となり、これまで逃していた商談や受注にも効果的にアプローチできる。
これまで点在していた顧客情報を取り込むことにより、見込み客に向けた適切かつ継続的なアプローチができ、企業全体の業績向上が期待できるだろう。
関連記事:MAでマーケティング業務を自動化!マーケティングオートメーションの活用事例
マーケティングオートメーションの活用事例
実際に、MAツール(マーケティングオートメーション)が企業にどのように活用されているか見ていこう。
メール配信業務の効率化(株式会社Faber Company)
SEO施策(検索エンジン最適化)・リスティング広告の代行業・サイト制作の3つの事業をメインに行う株式会社Faber Company。従来は既存のクライアントからの紹介で案件を獲得していたが、より多くの案件獲得を目指し、リード管理を目的にMAツール「SATORI」を導入した。
従来から行なっていたメルマガ配信を、SATORIを活用することによって、ターゲットを細かくセグメントし、見込み顧客に合わせたメール内容の最適化を実施。結果クリック率に改善が見られ、実際に商談に繋がる案件も増えている。
セミナー運営管理の業務効率化(SB C&S株式会社)
ブロードバンド諸サービスやITプロダクトの流通を手がけるSB C&S株式会社。新サービスやプロダクトの情報をを伝えるセミナーやキャンペーンを定期的に実施していたが、セミナー開催に到るまでの告知サイトや申し込みフォームの作成に時間がかかり、本来必要な集客フォローまで手が回らない状態だった。そのためセミナー開催の回数が減り、メーカーのPRニーズや顧客ニーズの把握ができないという課題を抱えていた。
2009年にイベントやセミナー管理に強みを持つMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」を導入。Webページ自動作成機能を用いることで、約2週間かかっていた工程をわずか約10分まで短縮に成功した。
また、集客データベースの蓄積により、営業担当者の業務効率の向上も実現。的確なターゲットに集客を行うことで、営業業務の無駄を削減している。告知サイトや営業フローの業務効率改善などを合わせて、年間200万円程度のコスト削減にも寄与している。
関連記事:MAでマーケティング業務を自動化!マーケティングオートメーションの活用事例
MAツールを選ぶポイント
1.BtoB向け製品とBtoC向け製品の違い
MAツールには、BtoB向け製品(法人顧客をターゲットにした企業向けのMA)とBtoC向け製品(一般消費者をターゲットにした企業向けのMA)の2種類がある。
BtoB向けのMAツールは、見込み顧客から受注確度の高いリードを抽出するためのセグメント機能やスコアリング機能を搭載している製品が多い。またセミナーやイベントなどオフラインのマーケティング施策をサポートするものや名刺管理機能を実装している製品もある。
一方のBtoC向けのMAツールは、約10万件程度の大量のリードを管理できるように設計されている。ECサイト運営やオウンドメディアなどオンライン経由で集客したリードの獲得、育成に重点が置かれていることが多い。
2.導入形態
MAツールには、オンプレミス環境に導入するソフトウェアパッケージ製品と、クラウドサービスとして提供されている製品がある。
オンプレミス環境に導入するソフトウェアパッケージ製品は、自社内の閉じたネットワークで運用できるためセキュリティが強固でカスタマイズ性が高いというメリットがある。
一方、クラウドサービスは、ハードウェアインフラを用意することなく、初期投資を抑えながら迅速に運用を開始できるというメリットがある。
3.対応チャネル
昨今ではLINEやFacebook、TwitterなどのSNS連携の強化が図られているものも多い。メール配信やWebサイトではアプローチできなかった層にも、サービスや製品の訴求ができる。
その他、GoogleやYahooなどのリターゲティングタグを設定することで、特定のセグメントに有効な広告配信を可能にする機能を搭載しているMAツールもある。
4.サポート内容
MAツールの導入には、初期設定や最適化・運用などベンダー側の支援が欠かせない。使用時の疑問やトラブルが起きた時に対応してくれる24時間365日のオンラインサポートや、コンサルティングサービスの充実度もMAツールを選定する重要な要素になっている。
ツールによっては、ユーザー会やオンラインコミュニティがあり、利用者同士で意見交換を行える場が用意されている場合もある。
5.契約形態(価格)
MAツールの価格は製品・サービスによって異なるが、パッケージ製品の場合はおよそ50〜100万円、クラウドサービスの場合は月額10〜20万円程度が相場となっている。
製品、サービスによっては、データベースに登録可能なリードの件数、メール配信数の上限によって価格が異なる場合がある。また、別途コンサルティング費用や保守サポート費用が必要な場合もある。
MAツールの導入方法
導入時に必要なもの
マーケティングオートメーションを導入する上で、一般的な導入方法、導入環境はどのようなものだろうか。
クラウドサービスでもMA以外のシステムと連携する必要があれば、情報システム部門が主導して導入することが望ましい。
セットアップ作業はツールによって異なり、MA用データベース設計、連携システム用アダプター開発などが必要なこともある。設計・開発を伴う場合、あるいは初期設定やカスタマイズの難易度が高い場合は、ベンダーが提供する導入支援サービスを利用するとよい。
MAを導入すれば、シナリオやスコアリング設定を行っていくこととなるが、それ以前に自社見込み客に対し、カスタマージャーニーを設計、明確化しておくことが必要だ。
カスタマージャーニーとは、見込み客が商品を知ること購入や利用に至る一連の流れを可視化したものだ。認知にはじまり、商品に興味や購入意欲を持ち、最終的に購入や利用に至る、といった流れを明確化することで、はじめて戦略的なシナリオやスコアリング設計ができるという考えだ。そのため、まずはマーケティング戦略としてカスタマージャーニーをあらためて見つめ直す、あるいは立て直すことも重要だ。
関連記事:MA活用に欠かせない!カスタマージャーニーの作成方法・効果・注意点とは
実際のMA導入時には、最初に自社Webサイトの各ページにスコアリング用のタグを設置する。これは、Webサイト経由で訪問したリードをスコアリングし、確度の高いリードを確実に獲得するために必要な作業となる。
また、MAのサーバ内にキャンペーンサイトを構築したり、問い合わせフォームを設置したりする場合には、自社ドメイン名で展開できるようDNS(Domain Name System)設定を変更し、サブドメインまたはサブディレクトリを発行する。
従来のリードデータを別のツールで管理している場合には、データ移行作業が必要となるが、多くのMAはCSVファイルのインポート機能を備えているので、既存データを新しいMAのデータベースフォーマットに合わせて整形、CSVデータ化したのちに取り込めば良い。
運用方法・サポートの有無に注意しよう
導入後は、社内のマーケティング部門のユーザーが主体となって運用することが一般的だ。保守サポートは、有償で提供されているケースが多い。
製品、サービスによっては、設定などのアドバイスを受けるためにコンサルティング契約が必要な場合もある。
代表的なMAツール
マーケティングオートメーションを提供する会社はさまざまだ。日本国内では、「Marketo Engage」(アドビシステムズ株式会社)や、「Salesforce Pardot」(株式会社セールスフォース・ドットコム)が高いシェアを誇っている。
ここでは代表的MAツールを5つご紹介。いずれも人気製品だが、ツールごとに特徴が異なるので、理解した上で自社のニーズに合った製品を導入しよう。
Market Engage
全世界で5,000社以上が採用するアメリカ発のMAツール「Marketo Engage(マルケト)」は、BtoB / BtoC問わず顧客のエンゲージメント向上を目的に設計され、製品やサービスの認知・購入〜ファン化までの長期的な顧客との関係構築が可能な統合型プラットフォームになっている。
24時間365日対応のカスタマー窓口や運用開始後の活用支援を行うコンサルティングサービスなど、サポート体制も充実。ユーザー同士の交流を促すユーザー会や情報交換ができるオンラインコミュニティもあり、スムーズにツールを活用できる。
Salesforce Pardot
セールスフォース・ドットコムが提供するBtoB向けMAツール「Salesforce Pardot」。同社のSFA(営業支援システム)である「Sales Cloud」とシームレスに連携することで、リード獲得からナーチャリング、営業への引き渡しをスムーズに実行。マーケティングだけでなく営業活動の効率化にも貢献する。
レポート機能を搭載し、マーケティングのROI(投資対効果)を常に確認。パフォーマンスを可視化することで、最適なキャンペーン実施や改善へと繋げることができる。
SHANON MARKETING PLATFORM
セミナーやイベントの開催などオフラインでのマーケティング施策に強みがある「SHANON MARKETING PLATFORM」。従来は工数のかかっていたセミナーお申し込みフォームの作成や問い合わせ管理などの業務効率化が可能。開催後の来場者へのフォローメールも自動で行える。
SHANON MARKETING PLATFORMの評判・口コミをみる
SATORI
株式会社SATORIが提供する国産MAツール「SATORI」。国産ならではの日本のビジネス環境に合った機能や馴染みやすくシンプルなインターフェースで700社を超える企業に導入されている。
ウェブサイトにタグを埋め込むだけで即日運用を開始できる他、匿名リードのデータ管理や蓄積に強みをもつ。24時間365日お問い合わせ可能なサポートセンターやオンラインマニュアルも充実。MA運用経験の少ない担当者でも、安心して利用できる。
Synergy!
正確にはCRMシステム(顧客管理システム)だが、メール配信やSNS連携・広告配信の機能を備えており、マーケティング活動の効率化へと繋げることができる。
クライアント証明書(デジタル証明書)をインストールしたPCのみ以外はアクセスができない他、二重ログインを検知するなど強固なセキュリティ機能がある。ユーザーからもセキュリティに関する評価が高く、安全に運用が可能。
上記で5つのMAツール以外にも、多くのMAツールがベンダーから提供されている。初期費用や月額料金、詳しい機能に関しては、下記の関連記事にまとめてあるので、併せて参考にして欲しい。
関連記事:【比較】人気MAツール10選|導入実績が豊富なマーケティングオートメーションツールの特徴や機能
MA導入の失敗例、注意点
国内企業にMAツールの導入が進む一方で、運用体制に問題を抱える企業は少なくない。MAツールは導入しただけでは意味がなく、効果的なマーケティング活動へと繋げていかなければならない。
この章では、MAツールの導入に失敗するポイントを取り上げ、解決方法を解説していく。
導入の目的やKPIが明確化されていない
そもそも導入の目的が明確になってないのに、MAツールの導入を進めてしまう企業が多い。MAツールの導入目的は大きく分けて「マーケティング活動・施策に関する業務の効率化」「マーケティング活動・施策内容の可視化」「営業部門との情報連携による業績アップ」の3つだ。
これらの目的に応じて、具体的なKPIの設定を行う。「商談の創出数」「リードの獲得数」「メールの開封率」「オフラインイベントの集客数」など定める指標はさまざまだが、MAツールを導入しただけでは、劇的に何かが改善されるわけではない。目的やそれを達成するための指標であるKPIを設定することで、初めて正しく運用できるといって間違いないだろう。
MAツールを使いこなせない
最近のMAツールは高機能・多機能化している反面、MAツールの運用経験がある担当者でないと使いこなせない。「結局使っているのはメール配信機能だけ」「操作が難しく、導入前より時間がかかる」といった課題を持つ企業も多い。
運用経験が豊富な人材を獲得するのも一つの手があるが、採用コストや採用までにかかる時間を加味する必要がある。
そこで活用したいのが、ベンダーが提供するコンサルティングサービスだ。無償・有償かはベンダーによって異なるが、初期設定の仕方や操作方法など「つまずきやすいポイント」に関して丁寧にサポートしてくれる。また、ベンダーがユーザー会を開催し、運用ノウハウの共有を促進しているケースもある。
自社だけで解決するのではなくベンダーのサポート体制を積極的に活用していくと良いだろう。
そもそもリード数が少ない
リードの獲得〜育成〜分類の効率化がMAツールの主な役割であるが、保有しているリード数自体が少ないのにも関わらず、運用を開始すると効果がでないケースが多い。
たとえば、メルマガ配信にMAツールが活用されることは多いが、一般的なメールの開封率は15%程度。保有するリードが100件しかなければ、開封されるのが15件という計算になる。実際の商談まで繋がるケースはごくわずかで、MAツールの導入に意味を見出せなくなる。
セミナー開催やコンテンツの充実によって、まずはリードの母数を増やす施策が必要になってくるだろう。
コンテンツ制作のリソースが不足している
MAツールでいくらマーケティング業務の効率化を図っても、メルマガやオウンドメディア・ホワイトペーパー、SNSといった、直接顧客と接点を持つコンテンツの質が低ければ、効果的に成果をあげることはできない。
そのためMAツールの運用だけでなく、コンテンツ制作にしっかりとリソースを割けるかどうかも、MAツール導入の成功・失敗の分かれ目である。自社でコンテンツの制作ができる人材がいない場合やリソースが足りていない場合は、外部パートナーとの連携も検討しよう。
MA(マーケティングオートメーション)の基礎知識
マーケティングオートメーションとは、営業などの現場においてリード顧客から成約までのマーケティング業務を自動化し、マーケティング活動そのものを効率化するツールを指す。Marketing Automationの頭文字をとって、通称MAと呼ばれる。
関連記事:MAとは?マーケティングオートメーションの機能・メリット・選び方
豊富なリード(見込み客)情報の中から確度の高い有望な見込み客を抽出、分析し、既存顧客に対し定期的に情報提供を行い、エンゲージメントを高めるなどの効果が期待できる。従来は顧客一人ひとりに応じた大規模な作業が手動で行われ膨大な時間と手間を要したが、そうしたマーケティング業務を自動化し、マーケターの業務効率を高めることができる。
また、営業部門が管理する顧客情報にシームレスに連携することで、営業部門は確度の高い見込み客や付加情報をもって営業活動が行えるため、全社として効率の高い営業活動が実現できる。
マーケティングオートメーションの定義
・メール、ソーシャルメディア、SMS、デジタル広告配信のうちいずれかを自動化できる
・メールにおいて、HTMLメールの作成やABテスト、スケジューリング、セグメンテーションができる
・ランディングページや申し込みフォームを生成できる
・見込み客の属性情報やオンライン行動履歴ごとに見込み確度のスコアを付け、スコアの合計値から有望性の高い見込み客を絞り込める
・特定の行動やトリガー、または期間の経過後に、自動的にターゲットにメール配信できる
・キャンペーンの結果をダッシュボード(レポート)で確認でき、ROIなどの詳細を分析できる
導入を検討したいユーザー層
・自社のマーケティング活動の業務効率、リードの案件化・商談化率に課題を持つマーケティング部門
・自社の事業拡大に取り組む営業・マーケティング担当
・リードの獲得、育成、管理業務を担当するマーケティング部門の担当者
・マーケティング部門からの情報に基づいてリードへ営業活動を行う営業部門の担当者
MAツールの利用用途
MAツールには対象となる顧客にあわせ、BtoB向け製品とBtoC向け製品がある。
ITreviewではそれぞれの利用用途で、カテゴリーグリッド、製品一覧をフィルタリング可能となっている。
MAは2000年代にアメリカで普及し始めた機能であるが、日本での導入が盛んに行われるようになったのは2014年頃からである。入力作業やメール送信などのルーティンワークを自動化できるとともに、マーケティング施策をツール上に統合できるため、利益向上や収益分析などに役立てられている。
現在ではMA市場が急速な成長を遂げており、多くの営業活動の現場で役立てられるほか、営業の効率化だけでなく顧客の購買意欲向上につながっている。One to Oneマーケティングも実現できることから、今後さらに普及が拡大していくだろう。
マーケティングオートメーションの必要性とは?MAの機能やできること
インターネットの普及拡大により情報収集が容易となった現代において、MAは顧客に効率的かつ確実なアプローチができ、"One to Oneマーケティング”の実現に不可欠といえる。
物事の情報収集に、さまざまな情報が行き交うインターネットの活用が基本となっていることからも、より顧客のニーズに絞った的確なアプローチが求められる。小規模であれば人手によりカバーできるものでも、数万人を超える顧客を抱える企業において、営業活動における業務効率化は大きな課題だろう。
MAの活用により、膨大なコストや時間を無駄にすることなく顧客の情報を一元管理できる。顧客の行動を踏まえたさまざまな施策を設定できるため、競合他社への流出を防止し、リピートを促すなど、顧客ロイヤリティーの構築にも効果的といえるだろう。
また、企業運営においてマーケティング効果を見える化できることも大きな利点となる。収益アップにつながるパターンを学習できるため、新しい施策の立案や、早期段階でボトルネックを発見できる。
関連記事:MAが営業のムダを解決!マーケティングオートメーションが質の高い営業を創出する理由
ここでは、MAの主な機能を紹介する。
見込み客(リード)管理
機能 |
解説 |
---|---|
見込み客(リード)情報管理 | 見込み客の企業名、所在地、電話番号などの企業情報、担当者の名刺情報、個人の場合は年齢、性別などの属性など、顧客に関する情報をデータベースに保管する |
Cookie情報とのひも付け | Cookieを埋め込み、オンラインの行動履歴によって最適なコンテンツを出し分けしたり、メールアドレスなどの情報を未取得であっても適切なキャンペーン案内を行ったりできる |
オフライン行動履歴管理 | 展示会や自社セミナーなどオフラインで獲得した名刺情報を見込み客情報として取り込み、蓄積できる。訪問履歴の有無によってそれぞれ最適なマーケティング施策を実施できる |
CRM/SFA連携 | マーケティングの施策状況やMAで獲得した顧客情報を営業部門が管理するCRMやSFAに反映し、との情報連携を実現する |
コンテンツの作成
機能 |
解説 |
---|---|
ランディングページ作成 | 検索エンジンの検索結果、または広告ページのリンクなどをクリックした見込み客が最初に目にするランディングページのコンテンツ制作を行う |
フォーム作成 | セミナーやイベントへの参加申し込み登録、見込み客に対するアンケートの実施など、リードの獲得を目的とした各種フォームを作成する |
SNS連携 | Twitter、FacebookなどのSNSを利用した情報発信およびSNS上で交わされた自社製品・サービス、他社製品との比較などに関するレビュー情報を収集し、運用管理する |
オウンドメディア、ブログ作成 | 自社製品、サービスと関連情報、事例などを発信する自社独自メディアを構築・配信する |
キャンペーン設計とスコアリング
機能 |
解説 |
---|---|
ターゲティング、キャンペーン管理 | 見込み客の中から自社製品、サービスのターゲットとなる客を絞り込み、キャンペーンの設計から実行、効果測定までを一元的に管理する |
スコアリング設定 | 見込み客の属性情報(企業規模、業界など)やオンライン行動履歴などの情報ごとに、見込み確度のスコアを付け、スコアの合計値からより有望性の高い見込み客を絞り込める |
シナリオ作成 | オンライン行動にトリガーを設定し、見込み客がそれを実行した場合にメール送信やポップアップによるキャンペーン提示、申し込みフォーム表示など次のアクションを自動実行するといったシナリオを作成できる |
メール作成・配信 | 作成したシナリオに基づいて、メールマガジンやキャンペーンメールの作成・配信を自動的に実行する |
ステップメール | 初回購入などのユーザーのアクションを起点に、1週間後、3カ月後など設定期間ごとにあらかじめ作成したメールを個別配信する |
ダッシュボード | ECサイトやキャンペーンサイトを含むWebサイトへの流入状況、メールマガジンやキャンペーンメールの配信結果、資料請求、問い合わせの状況といったマーケティング活動の各種プロセスを効果測定しダッシュボードにまとめる |
関連記事:マーケティング効率化に欠かせない!MA導入に欠かせない3つの機能とは
MA・SFA・CRMの違いとは?
企業のマーケティングや営業活動を効率化するためには、それらを支援するツールの活用が欠かせない。
その一つがマーケティング活動を自動化する「マーケティングオートメーション」だが、「SFA(セールスフォースオートメーション)」、「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」などと混在されることも多い。
それぞれの定義や機能の違いは以下のとおりだ。
名称 |
役割 |
主な機能 |
---|---|---|
MA(マーケティングオートメーション) | マーケティング活動の自動化・効率化 | 見込み客の獲得、育成など |
SFA(セールスフォースオートメーション) | 営業活動の効率化 | 商談・案件管理、営業活動の分析や受注予測など |
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント) | 顧客満足度やロイヤルティの向上 | 新規・既存顧客のキャンペーン管理、顧客とのコミュニケーション管理など |
高確度のリードを営業部門にリアルタイムに共有すれば、確度の高いリードからアプローチできるなど効率的な営業活動が実現できる。その他にも、例えば、MAツールで分析・抽出したリードに対する案件化の状況や商談の結果を、CRMやSFAから直接フィードバックして情報管理することで、MAでのスコアリングのロジックやポイントを変更するなど、より確度の高いリードの分析に役立てることができる。
また、営業担当者が既存顧客との商談の中でヒアリングしたBANT情報(Budget=予算、Authority=決裁権、Needs=必要性、Timeframe=時期)をMAとCRM、SFAの間で共有することで、適切なタイミングでキャンペーン施策を打ったり、商談につながりやすいコンテンツ作成などに活用したりできる。
既にCRMやSFAを導入済みの企業であるならば、連携しない選択はないだろう。それぞれの機能の違いは、下記でも詳しく解説している。
関連記事:MA・SFA・CRMの違いとは?定義や導入目的を分かりやすく解説
MAツールのシナリオ設計方法
見込み顧客の適切なナーチャリング(育成)に活用したいのが、MAツールのシナリオ設計だ。シナリオとは、直訳すると「脚本」を意味し、マーケティングオートメーションにおいては見込み顧客に対して、適切なタイミングでアプローチするための設計にあたる。
たとえば、「配信しているメルマガを開封したユーザーに対して、ホワイトペーパーやebookを送る」「商品を購入したユーザーに、関連商品の案内を送る」など、特定の行動を起こしたユーザーに対して、次のアクションを起こしてもらうための設計といえる。
この章では、シナリオ設計の方法について解説する。
STEP1:ターゲットを決める
まずは誰にアプローチすべきか、つまりターゲットの選定から始める。ターゲットの選定軸として用いられるのは、以下の3つの方法だ。
・ライフサイクル軸:「見込み客」「新規顧客」「休眠顧客」など企業と顧客の関係性を軸にターゲットを分類
・顧客行動軸:「メールの開封」「セミナーに参加」「商品を購入」など顧客の行動を軸にターゲットを分類
・顧客属性軸:年齢や性別、職業・役職や年収といった顧客の属性を軸にターゲットを分類
STEP2:アプローチするタイミングを決める
ターゲットに対して適切なタイミングでアプローチすることで、効果的に次のアクションへと繋げることができる。メルマガであれば「何時に送るべきか」「顧客がどの行動をとった後になにを送るべきか」「どれくらいの頻度で送るべきか」といった視点で考えるのが大切だ。
STEP3:提供するコンテンツを決める
ターゲットによって、提供するコンテンツの内容は異なる。
たとえば、かつては継続的にサービスや製品を利用していたものの直近でアクションを起こしていないユーザーに対しては、割引クーポンを配布するなど再びアクションを起こしてもらうためのトリガーとなるコンテンツが必要だ。
匿名のユーザーに対しては、ホワイトペーパーやebookなどを配布し、個人情報を入力してもらうことで実名ユーザーへと転換できる。
STEP4:チャネルを決める
コンテンツを届けるためのチャネルを設定する。
MAツールというとメール配信が一般的だが、必ずしもメール配信だけでなく「Webサイト」や「電話」「セミナー」など一つの手法に頼らず、さまざまなチャネルを組み合わせることで、効果的なアプローチを実現する。
マーケティングオートメーションの導入効果
1. マーケティング活動・施策に関する業務の効率化
リード獲得施策の作成・実施、リードのスコアリング、リードナーチャリング、Webコンテンツやメールの作成・配信、効果測定など、マーケティング担当者は常に多くのタスクを抱えている。すべてを手作業で行うと、膨大な時間と作業負荷がかかるだろう。MAを導入すれば、そうした負荷の高い各種業務プロセスを自動化し、作業にかかる時間と人件費を含むコストを大幅に削減できる。
細かな作業でも自動化は可能だ。自社のWebサイトの閲覧履歴やセミナー参加などのリードをデータ化することで、潜在的ニーズのある見込み客に絞ったメール送信などの細かなフォローができる。顧客の年齢や性別のみならず、購入履歴や閲覧ページなどから細かなセグメントに分類できるため、メール以外の広告配信、LINE配信などの適切なコンテンツ配信を実現できる。
また、申し込みフォームの作成やリストアップ、セミナー後のフォローなどのさまざまな作業にも役立てられるため、マーケターは価値創造などといった人手ならではの作業に目を向けられる。
2. マーケティング活動・施策内容の可視化
マーケティング活動・施策のための各種業務プロセスは、マーケティング担当者の経験や知識に基づく属人的な方法で行われてきた。MAを導入して活動・施策内容を可視化すれば、そうした属人性は排除される。マーケティング経験が浅い担当者でも業務を実践できるだろう。
リスティング広告などのWebマーケティングにおいては、KPIの設定により流入元やコンバージョンに至った顧客の割合などを把握することは重要だ。同時に、MAによって直接収益に影響している施策を把握できるという利点がある。MAの導入により施策や効果を可視化することで、不要な広告費や制作費などを削減し、コストを最適化できるだろう。
3. 営業部門との情報連携による業績アップ
マーケティング部門と営業部門の情報連携ができていないために、リードに対する営業活動が不十分で業績に結び付かないことがある。MAを導入して高確度のリード情報などを営業部門へリアルタイムに共有すれば、顧客に効果的な営業ができ、業績向上につなげられる。
また、獲得した顧客のデータはMA上で管理できるため、組織全体で情報共有が可能となる。従来では、営業担当者が商談などで交換した名刺は個人で保有し、その情報を用いてアプローチするという手法が一般的だった。獲得できる案件のタイミングを逃していることや、見込み客に十分なアプローチができていない案件もあっただろう。MAの導入により顧客情報が全て営業活動の資産となり、これまで逃していた商談や受注にも効果的にアプローチできる。
これまで点在していた顧客情報を取り込むことにより、見込み客に向けた適切かつ継続的なアプローチができ、企業全体の業績向上が期待できるだろう。
関連記事:MAでマーケティング業務を自動化!マーケティングオートメーションの活用事例
マーケティングオートメーションの活用事例
実際に、MAツール(マーケティングオートメーション)が企業にどのように活用されているか見ていこう。
メール配信業務の効率化(株式会社Faber Company)
SEO施策(検索エンジン最適化)・リスティング広告の代行業・サイト制作の3つの事業をメインに行う株式会社Faber Company。従来は既存のクライアントからの紹介で案件を獲得していたが、より多くの案件獲得を目指し、リード管理を目的にMAツール「SATORI」を導入した。
従来から行なっていたメルマガ配信を、SATORIを活用することによって、ターゲットを細かくセグメントし、見込み顧客に合わせたメール内容の最適化を実施。結果クリック率に改善が見られ、実際に商談に繋がる案件も増えている。
セミナー運営管理の業務効率化(SB C&S株式会社)
ブロードバンド諸サービスやITプロダクトの流通を手がけるSB C&S株式会社。新サービスやプロダクトの情報をを伝えるセミナーやキャンペーンを定期的に実施していたが、セミナー開催に到るまでの告知サイトや申し込みフォームの作成に時間がかかり、本来必要な集客フォローまで手が回らない状態だった。そのためセミナー開催の回数が減り、メーカーのPRニーズや顧客ニーズの把握ができないという課題を抱えていた。
2009年にイベントやセミナー管理に強みを持つMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」を導入。Webページ自動作成機能を用いることで、約2週間かかっていた工程をわずか約10分まで短縮に成功した。
また、集客データベースの蓄積により、営業担当者の業務効率の向上も実現。的確なターゲットに集客を行うことで、営業業務の無駄を削減している。告知サイトや営業フローの業務効率改善などを合わせて、年間200万円程度のコスト削減にも寄与している。
関連記事:MAでマーケティング業務を自動化!マーケティングオートメーションの活用事例
MAツールを選ぶポイント
1.BtoB向け製品とBtoC向け製品の違い
MAツールには、BtoB向け製品(法人顧客をターゲットにした企業向けのMA)とBtoC向け製品(一般消費者をターゲットにした企業向けのMA)の2種類がある。
BtoB向けのMAツールは、見込み顧客から受注確度の高いリードを抽出するためのセグメント機能やスコアリング機能を搭載している製品が多い。またセミナーやイベントなどオフラインのマーケティング施策をサポートするものや名刺管理機能を実装している製品もある。
一方のBtoC向けのMAツールは、約10万件程度の大量のリードを管理できるように設計されている。ECサイト運営やオウンドメディアなどオンライン経由で集客したリードの獲得、育成に重点が置かれていることが多い。
2.導入形態
MAツールには、オンプレミス環境に導入するソフトウェアパッケージ製品と、クラウドサービスとして提供されている製品がある。
オンプレミス環境に導入するソフトウェアパッケージ製品は、自社内の閉じたネットワークで運用できるためセキュリティが強固でカスタマイズ性が高いというメリットがある。
一方、クラウドサービスは、ハードウェアインフラを用意することなく、初期投資を抑えながら迅速に運用を開始できるというメリットがある。
3.対応チャネル
昨今ではLINEやFacebook、TwitterなどのSNS連携の強化が図られているものも多い。メール配信やWebサイトではアプローチできなかった層にも、サービスや製品の訴求ができる。
その他、GoogleやYahooなどのリターゲティングタグを設定することで、特定のセグメントに有効な広告配信を可能にする機能を搭載しているMAツールもある。
4.サポート内容
MAツールの導入には、初期設定や最適化・運用などベンダー側の支援が欠かせない。使用時の疑問やトラブルが起きた時に対応してくれる24時間365日のオンラインサポートや、コンサルティングサービスの充実度もMAツールを選定する重要な要素になっている。
ツールによっては、ユーザー会やオンラインコミュニティがあり、利用者同士で意見交換を行える場が用意されている場合もある。
5.契約形態(価格)
MAツールの価格は製品・サービスによって異なるが、パッケージ製品の場合はおよそ50〜100万円、クラウドサービスの場合は月額10〜20万円程度が相場となっている。
製品、サービスによっては、データベースに登録可能なリードの件数、メール配信数の上限によって価格が異なる場合がある。また、別途コンサルティング費用や保守サポート費用が必要な場合もある。
MAツールの導入方法
導入時に必要なもの
マーケティングオートメーションを導入する上で、一般的な導入方法、導入環境はどのようなものだろうか。
クラウドサービスでもMA以外のシステムと連携する必要があれば、情報システム部門が主導して導入することが望ましい。
セットアップ作業はツールによって異なり、MA用データベース設計、連携システム用アダプター開発などが必要なこともある。設計・開発を伴う場合、あるいは初期設定やカスタマイズの難易度が高い場合は、ベンダーが提供する導入支援サービスを利用するとよい。
MAを導入すれば、シナリオやスコアリング設定を行っていくこととなるが、それ以前に自社見込み客に対し、カスタマージャーニーを設計、明確化しておくことが必要だ。
カスタマージャーニーとは、見込み客が商品を知ること購入や利用に至る一連の流れを可視化したものだ。認知にはじまり、商品に興味や購入意欲を持ち、最終的に購入や利用に至る、といった流れを明確化することで、はじめて戦略的なシナリオやスコアリング設計ができるという考えだ。そのため、まずはマーケティング戦略としてカスタマージャーニーをあらためて見つめ直す、あるいは立て直すことも重要だ。
関連記事:MA活用に欠かせない!カスタマージャーニーの作成方法・効果・注意点とは
実際のMA導入時には、最初に自社Webサイトの各ページにスコアリング用のタグを設置する。これは、Webサイト経由で訪問したリードをスコアリングし、確度の高いリードを確実に獲得するために必要な作業となる。
また、MAのサーバ内にキャンペーンサイトを構築したり、問い合わせフォームを設置したりする場合には、自社ドメイン名で展開できるようDNS(Domain Name System)設定を変更し、サブドメインまたはサブディレクトリを発行する。
従来のリードデータを別のツールで管理している場合には、データ移行作業が必要となるが、多くのMAはCSVファイルのインポート機能を備えているので、既存データを新しいMAのデータベースフォーマットに合わせて整形、CSVデータ化したのちに取り込めば良い。
運用方法・サポートの有無に注意しよう
導入後は、社内のマーケティング部門のユーザーが主体となって運用することが一般的だ。保守サポートは、有償で提供されているケースが多い。
製品、サービスによっては、設定などのアドバイスを受けるためにコンサルティング契約が必要な場合もある。
代表的なMAツール
マーケティングオートメーションを提供する会社はさまざまだ。日本国内では、「Marketo Engage」(アドビシステムズ株式会社)や、「Salesforce Pardot」(株式会社セールスフォース・ドットコム)が高いシェアを誇っている。
ここでは代表的MAツールを5つご紹介。いずれも人気製品だが、ツールごとに特徴が異なるので、理解した上で自社のニーズに合った製品を導入しよう。
Market Engage
全世界で5,000社以上が採用するアメリカ発のMAツール「Marketo Engage(マルケト)」は、BtoB / BtoC問わず顧客のエンゲージメント向上を目的に設計され、製品やサービスの認知・購入〜ファン化までの長期的な顧客との関係構築が可能な統合型プラットフォームになっている。
24時間365日対応のカスタマー窓口や運用開始後の活用支援を行うコンサルティングサービスなど、サポート体制も充実。ユーザー同士の交流を促すユーザー会や情報交換ができるオンラインコミュニティもあり、スムーズにツールを活用できる。
Salesforce Pardot
セールスフォース・ドットコムが提供するBtoB向けMAツール「Salesforce Pardot」。同社のSFA(営業支援システム)である「Sales Cloud」とシームレスに連携することで、リード獲得からナーチャリング、営業への引き渡しをスムーズに実行。マーケティングだけでなく営業活動の効率化にも貢献する。
レポート機能を搭載し、マーケティングのROI(投資対効果)を常に確認。パフォーマンスを可視化することで、最適なキャンペーン実施や改善へと繋げることができる。
SHANON MARKETING PLATFORM
セミナーやイベントの開催などオフラインでのマーケティング施策に強みがある「SHANON MARKETING PLATFORM」。従来は工数のかかっていたセミナーお申し込みフォームの作成や問い合わせ管理などの業務効率化が可能。開催後の来場者へのフォローメールも自動で行える。
SHANON MARKETING PLATFORMの評判・口コミをみる
SATORI
株式会社SATORIが提供する国産MAツール「SATORI」。国産ならではの日本のビジネス環境に合った機能や馴染みやすくシンプルなインターフェースで700社を超える企業に導入されている。
ウェブサイトにタグを埋め込むだけで即日運用を開始できる他、匿名リードのデータ管理や蓄積に強みをもつ。24時間365日お問い合わせ可能なサポートセンターやオンラインマニュアルも充実。MA運用経験の少ない担当者でも、安心して利用できる。
Synergy!
正確にはCRMシステム(顧客管理システム)だが、メール配信やSNS連携・広告配信の機能を備えており、マーケティング活動の効率化へと繋げることができる。
クライアント証明書(デジタル証明書)をインストールしたPCのみ以外はアクセスができない他、二重ログインを検知するなど強固なセキュリティ機能がある。ユーザーからもセキュリティに関する評価が高く、安全に運用が可能。
上記で5つのMAツール以外にも、多くのMAツールがベンダーから提供されている。初期費用や月額料金、詳しい機能に関しては、下記の関連記事にまとめてあるので、併せて参考にして欲しい。
関連記事:【比較】人気MAツール10選|導入実績が豊富なマーケティングオートメーションツールの特徴や機能
MA導入の失敗例、注意点
国内企業にMAツールの導入が進む一方で、運用体制に問題を抱える企業は少なくない。MAツールは導入しただけでは意味がなく、効果的なマーケティング活動へと繋げていかなければならない。
この章では、MAツールの導入に失敗するポイントを取り上げ、解決方法を解説していく。
導入の目的やKPIが明確化されていない
そもそも導入の目的が明確になってないのに、MAツールの導入を進めてしまう企業が多い。MAツールの導入目的は大きく分けて「マーケティング活動・施策に関する業務の効率化」「マーケティング活動・施策内容の可視化」「営業部門との情報連携による業績アップ」の3つだ。
これらの目的に応じて、具体的なKPIの設定を行う。「商談の創出数」「リードの獲得数」「メールの開封率」「オフラインイベントの集客数」など定める指標はさまざまだが、MAツールを導入しただけでは、劇的に何かが改善されるわけではない。目的やそれを達成するための指標であるKPIを設定することで、初めて正しく運用できるといって間違いないだろう。
MAツールを使いこなせない
最近のMAツールは高機能・多機能化している反面、MAツールの運用経験がある担当者でないと使いこなせない。「結局使っているのはメール配信機能だけ」「操作が難しく、導入前より時間がかかる」といった課題を持つ企業も多い。
運用経験が豊富な人材を獲得するのも一つの手があるが、採用コストや採用までにかかる時間を加味する必要がある。
そこで活用したいのが、ベンダーが提供するコンサルティングサービスだ。無償・有償かはベンダーによって異なるが、初期設定の仕方や操作方法など「つまずきやすいポイント」に関して丁寧にサポートしてくれる。また、ベンダーがユーザー会を開催し、運用ノウハウの共有を促進しているケースもある。
自社だけで解決するのではなくベンダーのサポート体制を積極的に活用していくと良いだろう。
そもそもリード数が少ない
リードの獲得〜育成〜分類の効率化がMAツールの主な役割であるが、保有しているリード数自体が少ないのにも関わらず、運用を開始すると効果がでないケースが多い。
たとえば、メルマガ配信にMAツールが活用されることは多いが、一般的なメールの開封率は15%程度。保有するリードが100件しかなければ、開封されるのが15件という計算になる。実際の商談まで繋がるケースはごくわずかで、MAツールの導入に意味を見出せなくなる。
セミナー開催やコンテンツの充実によって、まずはリードの母数を増やす施策が必要になってくるだろう。
コンテンツ制作のリソースが不足している
MAツールでいくらマーケティング業務の効率化を図っても、メルマガやオウンドメディア・ホワイトペーパー、SNSといった、直接顧客と接点を持つコンテンツの質が低ければ、効果的に成果をあげることはできない。
そのためMAツールの運用だけでなく、コンテンツ制作にしっかりとリソースを割けるかどうかも、MAツール導入の成功・失敗の分かれ目である。自社でコンテンツの制作ができる人材がいない場合やリソースが足りていない場合は、外部パートナーとの連携も検討しよう。
MA(マーケティングオートメーション)導入時のROI・費用対効果の算出方法
マーケティングにおけるROIは、投資額に対し、どれだけの効果を得たか計算する。効果とは、リードの獲得数、リードの育成とそれによる売り上げ向上額、マーケターの工数削減などがポイントとなる。
1.リードの獲得とリード育成営業との連携強化による売り上げ拡大
BtoB事業の場合、売り上げの構成要素は以下が一般的といえる。
MA導入により主に効果を高められるのは、リード数の拡大、またリードの育成(顧客の購買意欲を高める)による商談化率の向上である。これにより、営業部門がアプローチできる商談数の向上が可能だ。
しかし現場では、マーケティング部門と営業部門の連携不足により、リードの購買意欲が高まっているタイミングに営業部門に情報提供できていないといったことも少なくない。MAを導入すれば、営業部門で利用しているCRMと連携しリアルタイムでの情報共有が可能となり、効果的な営業ができる。
ここでは、MA導入により商談数が増え、営業担当者1人当たり1件の受注が増えたと想定し、ROIを考えてみる。
※MAの活用に伴うコンテンツ制作費などは、MA導入の有無にかかわらず必要なものであるため、ここでは省略する
●計算の例
(A) MA導入で純増した売り上げ
営業担当:5人
商品単価:100,000円
従来受注件数:25件/月
※マーケティング担当、営業担当間で角度の高いリード情報の共有など連携強化により成約数増加
MA導入後の受注件数:30件/月
売り上げ:(純増(30-25件)× 100,000円) = 500,000円/月
(B)MA導入コスト
MA費用:200,000円/月
MA導入で純増した売り上げ/月 = 500,000円(純増)-200,000円(ライセンス費用)
=300,000円
ROI = 300,000 ÷ 200,000 ×100(%)= 150%
2.マーケティング活動・施策に関する業務負荷の削減効果
上記1で記載したROIに加え、MAを導入することでいくつかのマーケティング業務が自動できることから、マーケターの工数削減も実現する。
具体的には「リード獲得施策の実施」「リードのスコアリング」「リードナーチャリング」「Webコンテンツやメール作成・配信」「キャンペーンの効果測定」「高確度リードの営業部門へ受け渡し」といった業務をExcelなどで管理すると、膨大な作業工数、つまり人件費が必要になる。
MAを導入すれば、こうした作業負荷の高い各業務プロセスを自動化でき、作業にかかる人件費の削減が期待できる。
●計算の例
(A)マーケティング担当者:5人
(B)1人あたりの作業圧縮時間:10時間/月(想定)
※リードの取得、スコアリング、自動メール配信機能などにより、マーケターの情報入力、作業時間が減少
→約8時間を想定
ツール上での情報共有により、営業部門へのリード受け渡しといったコミュニケーションが大幅に圧縮
→約2時間を想定
(C)1人あたりの時間給:4,000円
費用対効果/月(MA導入で削減できる人件費)=5(人)× 10(H)× 4,000(円)=200,000円
(売上拡大の副次的な効果となるため、MA導入費用は含まない)